明治が40年以上にわたり開設している電話での育児・栄養相談窓口「明治 赤ちゃん相談室」への相談件数が新型コロナウイルス禍の影響で増加傾向にある。4月に緊急事態宣言が発令されて以降、その数は前年同月比を高水準で超過。外出自粛に伴う在宅時間の増加で、新生児・乳児と一緒に過ごす時間が増え不安や疲労感の蓄積が背景にある。

今やインターネットやSNSを利用する機会が増えている半面、さまざまな情報が氾濫(はんらん)していることで、不安を増大させてしまうこともあるため、直接電話で管理栄養士・栄養士と対話することの安心感にニーズが高まっている。

人と会う機会が制限される状況が生まれたことで、対面しなくても相談できる電話相談を選択することが増加し、特に近くに相談できる相手がいない人が相談者になっている傾向がある。

相談内容は、時代が変化する中でも「授乳」と「離乳食・食事」の二つが多い。新型コロナ禍では、在宅時間の増加などに伴う育児への疲労感や不安感を背景に、時短や手間をかけない離乳食・幼児食テクニック、簡単なレシピや冷凍保存の活用、夏場にむけての衛生面、栄養バランスについての相談などが多く寄せられた。

昨今はインターネットの普及とともに、育児の悩みを子育て関連情報サイトやアプリ、SNSを利用して子育て情報を得る機会が増加している。しかし一方で、「情報量が多く正確な情報が分からない」や「多くの情報を目にすることで不安が増大する」といった意見も根強い。

その点で、同窓口は相談者一人一人のライフスタイルに合わせて、専門家である管理栄養士・栄養士に直接相談できるという電話ならではのメリットが評価。市町村の健診や店頭相談などが休止されている中、「電話がつながりゆっくり話ができて良かった」「誰かと話したくて電話した」など、相談者からは育児生活や精神的支えになったという声が寄せられている。

緊急事態宣言が7都府県から全国に拡大された4月、同相談室への問い合わせ件数は前年比32.8%増、前月比44.9%増と急増した。以降も5月に前年比10.6%増、6月に同38.7%増と2桁増が続いた。

「明治 赤ちゃん相談室」は、同社の育児商品が増えるのに伴って、育児そのものを応援する支援の幅を広げる目的で1976年に開設。授乳や離乳食など、栄養に関する悩みを抱える母親や妊婦からの電話相談を受け付けている。相談員全員が管理栄養士・栄養士の資格を持ち、栄養の専門家として個々の状況に合わせたアドバイスを提供している。4月からはフリーダイヤル化を実施し、通信費の負担がなくなったことも相談件数増加の一因とされている。

◇日本食糧新聞の2020年8月12日号の記事を転載しました。