サラリーマンの昼食で不動の人気を誇るカツ丼。一分の隙もなく完成されているこの人気丼を大胆に進化させてしまったのが、炭焼きバル「炉端バル さま田」の「とろとろ玉子の角煮かつ丼」だ。器からはみ出る不思議な細長形状のカツにとろとろのオムレツがのり、「これがカツ丼!?」と目を疑う一品だが、50席のランチ営業で1日70~80食を売り上げる名物メニューなのだ。

器からはみ出る発想力

「さま田」の名物ランチ「とろとろ玉子の角煮かつ丼」は、豚ばら肉の角煮を揚げたカツとオムレツをのせた、斬新な発想のカツ丼である。玉ネギをピューレ状に煮込んで作った醤油ダレをご飯にかけ、醤油ダレにくぐらせた豚角煮カツと、卵1個半で作ったオムレツを盛り付ける。

器からはみ出る大きさの角煮カツは箸で崩れる軟らかさで、しっかりめの味付け。とろとろのオムレツ、ご飯とともに口に入れると、見事に超一級のカツ丼の味になるのだ。

角煮は圧力鍋で煮込んで仕込むのだが、煮込んだ直後は包丁を入れると崩れてしまうほど軟らかいため、一晩置いてから長さ約22cm、厚さ約1.5cmの形状に切り分けている。注文が入ってから油で揚げるが、既に角煮として仕上がっているため、揚がるのは早い。

オムレツを開き、カツに絡めて食べるとカツ丼の味に

ユニークなこのカツ丼は、同店の佐俣孝代表が「インパクトのあるカツ丼をランチで提供したい」と考案。それまで同店では一口大に切った豚角煮丼を提供していたが、この豚角煮を「一口大に切り分けず、器からはみ出る長さのままカツにしてはどうか」と思い立ち、試作した。

ところが、このカツからカツ丼に仕上げる際に、「フライパンに入りきらず、だし汁でうまく煮ることができない」「とじる卵が大量に必要」という難点に突き当たる。そこで、「卵でとじずにオムレツにしてのせ、ご飯にタレをかければ口の中でカツ丼になるのでは」と、思いついたという。

約5㎏の豚ばら塊肉を3等分にしてA4サイズほどの大きさにしてから煮込み、角煮に仕上げる

オムレツを一つ一つ作るのは手間がかかるが、「一つのメニューに人気が集中すれば、効率的に作業できる」(佐俣代表)。同店のランチは唐揚げ定食やカツカレーなど計5品を用意しているが、狙い通り、約8割のお客が角煮かつ丼を注文するため、調理・提供はスムーズだ。

カツ丼という完成度がすこぶる高いメニューを、さらに進化させたその発想力は、あっぱれ、のひと言である。

夜は肉などの炭焼き料理が楽しめる居酒屋バルに

●店舗情報
「炉端バル さま田」 
所在地=東京都千代田区神田佐久間町3-21-6 第1ヤマコビル1階
開業=2014年11月
坪数・席数=18坪・50席
営業時間=11時30分~14時30分、17時~23時30分、土・日・祝17時~23時30分。不定休
平均客単価=昼750円、夜3300~3500円

◇外食レストラン新聞の2019年8月5日号の記事を転載しました。