鶏唐揚げの聖地と呼ばれる大分県中津市には、鶏唐揚げ店が約30軒ある。人口約8万人の街にこれほど密集した理由は、戦後栄えた養鶏業が衰退したこと。やむなく鶏唐揚げ店に転業した者たちが、幸いにも「からあげ文化」を育てたのである。その先駆けが「中津からあげ総本家 もり山三光本店」だ。創業から半世紀、「生鶏・揚げたて・鶏唐のみ」という「中津からあげ」の指標を守り続けている。

注文後に揚げて熱々を提供、作り置きは厳禁

1970年「森山からあげ店」創業。初代店主の森山韶二氏は養鶏を自営していたが、鶏肉と鶏卵の価格下落により経営が悪化。苦肉の策として鶏唐揚げ専門店に転業した。開店にあたり調理を学びに行ったのが、隣町・宇佐市の「庄助」。

当時、庄助は鶏唐揚げの有名店であり、そこで教わった基礎をもとに「中津からあげ」の原型を作り上げた。ちなみに庄助は「日本初の鶏唐揚げ専門店」とされ、その庄助は近隣の中華料理店「来々軒」から鶏唐揚げを教わったことから、宇佐市は「鶏唐揚げ発祥の地」といわれる。

どんなに混雑しても注文1件につきフライヤー1台を厳守

調理は生鶏肉を厳守。鶏唐揚げは肉汁のうま味が命なので、解凍時に肉汁が抜けてしまう冷凍肉は厳禁。鶏肉をニンニクベースの塩ダレに一晩漬け込み、注文後に片栗粉を薄くまぶし、180℃の油で5分揚げる。揚げたてを提供し、作り置きは厳禁。

揚げ油は、汚れた分を除去して、毎日つぎ足して使用。長年かけて、鶏肉のエキスが揚げ油に浸透している。その揚げ油の風味こそ中津からあげの醍醐味だという。

揚げたてのおいしさを守るため、注文ごとにフライヤー1台

「若鶏からあげ」の種類は「骨付き」「モモ肉」「ムネ肉」「砂肝」「手羽先」「骨付きモモ」の6品。モモ肉が一番人気で注文の6割以上を占める。100g単位で注文できるが、1個30~40gのため200g以上の注文が一般的。平均日販は、平日40~60kg、休日100~140kg。休日は集会需要がありkg単位の電話注文が多数入る。

山と田畑に囲まれた三光本店からFC展開を始めて現在9店舗

厨房の主役は4台のフライヤー。揚げたての提供が原則のため、たとえ100gの注文であっても、その100gだけのためにフライヤー1台を使う。揚げるのに5分かかるため、1台で対応できる注文は1時間に10件。4台フル稼働で40件。昼と夕方は揚げっぱなしで待ち客が絶えない。

生産能力に限界があるので、観光客が来店する週末や行楽シーズンは、すぐに待ち客が並んでしまうが、揚げたてのおいしさを守るためには、絶対に譲れない原則だ。

【店舗概要】
「中津からあげ総本家 もり山三光本店」
経営:(株)総本家もり山
所在地:大分県中津市三光原口653

◇外食レストラン新聞8月6日号の記事を転載しました。