最近日本酒を売りにする居酒屋で細巻きの海苔巻きをつまみに酒をたしなむ「あてまき」がはやっている。その進化形として口を開けたいなり寿司に具をたっぷりのせた「うなりずし」を提供して個性を打ち出しているのが東京・王子の「海鮮大衆酒場 ル うなり」だ。フォトジェニックな見栄えとともに締めにも酒肴にもなる新アイテムとして注目度が高まりそうだ。

お揚げがジューシーな「うなりずし」

同品の定番はマグロ角煮、アサリ山椒煮、生海苔佃煮の3種を並べた「うなりずし3カン」。この他に酒粕カマンベールとチャンジャ、旬野菜のおひたしといった創作性の高い単品を10種ほどラインアップする。

「商品開発のきっかけは当店からほど近い場所に稲荷神社があったこと」と店長の小島孝之さんは笑い、そこからいなり寿司と主力商材である水産食材を組み合わせた商品を考えるに至ったという。

お揚げの味付けは店内でひいただし、酒、みりん、醤油ときわめてオーソドックスなものだが、薄味でジューシーさが特徴。ひと口かむとお揚げに含んだだしがこぼれるほどだ。

ツーオーダーで調理するため、お揚げにたっぷりとだしを含ませたジューシーないなり寿司が提供可能だ

「市販されるいなり寿司は作り置きやテークアウトを前提に保存性を重視しますから味付けは濃いめで水気もしっかり切ったお揚げになります。しかし当店は注文を受けてから作りますし、出来たてを食べていただくスタイル。そこで、だしの味を楽しめるスタイルを採用して当店だから味わっていただける味を打ち出すことにしました」と小島店長。

酒と刺し身を楽しんだ後の締めの一品にぴったり

シャリには新潟産のコシイブキを使用。同県の代表品種コシヒカリと対照的に粘りのないサラっとした食感が特徴で、これを硬めに炊き、ほろほろと口中で崩れる食感に仕上げる。寿司酢も赤酢を使ってさっぱりとしたした薄味だ。

この組み合わせが、酒と刺し身を楽しんだ後の締めの一品にぴったり。組客あたりの注文率は7割と居酒屋の締め商品としては高い注文率を誇る。また具のボリュームも20g前後と食べ応えは満点で、酒のつまみとしても、もちろんいける。

うなりずしの具として仕込む食材は、3カン盛りに使うマグロ角煮、アサリ山椒煮、生海苔佃煮、季節野菜のおひたしなどがあるが、酒粕カマンベールチーズや生シラスのような一品料理でも提供している食材など多様な具材を盛り付け可能。そうした商品特性がうなりずしの楽しさを広げている。

主客層は30~40代の近隣住民で、平日は帰宅途中に立ち寄るビジネスマンやカップル、土曜日は家族連れも吸収。グループ会社に鮮魚卸会社を持つ強みを生かし、築地から届く高品質な刺し身が売れ筋だ。周囲はチェーン居酒屋が大半で、カジュアルプライスで本格的な海鮮料理と希少な日本酒が楽しめる店として人気を博す
【店舗情報】
「海鮮大衆酒場 ル うなり」
経営=FF.a
店舗所在地=東京都北区王子1-22-2 王子一番街ビル105
坪数・席数=15坪・30席
営業時間=月曜~金曜17時~24時、土曜15時~23時。月曜定休
平均客単価=3500円
1日平均集客数=40人

◇外食レストラン新聞2018年7月2日号の記事を転載しました。