中央ヨーロッパ・ハンガリーの首都ブダペスト在住フードライターの旅野きっこです。ヨーロッパに点在する素敵な観光地を訪れながら各地のグルメをおいしいお酒とともに堪能する日々を送っています。
ハンガリーはワイナリーが点在し、かなりお手軽においしい赤ワイン&白ワインが楽しめます。しかし、忘れてはならないのが世界三大貴腐ワインの1つである「トカイアスー」。上品かつ深い甘みを持ち、ハンガリー名産のフォアグラとともにいただくと、えも言われぬ境地と喜びへと達します!
今回はそんな貴腐ワイン「トカイアスー」をご紹介。お酒がそんなに得意ではない人でも1杯は試してみてほしいですね。

ハンガリー東部・トカイの街

「トカイアスー」の“トカイ”は街の名前。ハンガリー東部に位置する小さな街です。日本と比べると経済的にかなり遅れをとるハンガリーですが、ここトカイは比較的ちょっと裕福なのではないか? と感じさせる街並み。壁のペンキがきちんと塗り替えられているのです。

そんなトカイの街の中心部にはお酒の神・バッカスの銅像が。写真スポットとなっており、多くの観光客が同じポーズで写真を撮っています。街の端から端まで歩いても20分ほどという小さな街にワイン蔵が点在し、テイスティングを楽しめます。

ワイン蔵の他に見るべきスポットはそれほど多くありませんが、観光客はハンガリー料理店やアンティークショップ、教会などを訪れます。

フルミントというブドウ品種の栽培が盛んなこの地方では、秋から冬にかけて濃い霧が発生します。霧が丘の上に昇り、ブドウ畑全体を覆うことで「貴腐菌」というカビに覆われた貴腐葡萄ができあがり、とても甘くなるのです。

トカイアスーの品質と階級

トカイアスーにはさまざまな階級があります。プットニョス(Puttonyos)というトカイ地方のぶどう籠の中に、何杯の貴腐葡萄が含まれるかで3~6の数字が割り当てられます。3が低く6が高いのですが、やはり数字通り3プットニョスは甘みが少なく値段も低いです。6プットニョスになると甘みが大変強く値段も高め。

この数字に沿ったテイストには個人の好みがありますが、筆者は5プットニョスが1番好みです。日本国内でも売られていますが、価格はハンガリーの3倍ほど。トカイのワイナリーではペットボトルでの購入も可能なので、小さい瓶に入って高値で売られているのを見ると買いづらいですね。

階級としては3~6ありますが、天候の良い年に生まれたトカイアスーは6プットニョスを超える甘みを持つため、「エッセンシア」という最高の階級が生まれました。甘みが充分で香り高く、こちらはハンガリー国内で購入してもそれなりの価格です。お祝い時に少しずつ飲みたいテイストです。繊細で何ともいえない高級感が楽しめます。

トカイアスーのおいしい飲み方は少しずつ、その味のように繊細にいただくというもの。小さなグラスにデザートワインとして楽しんではいかが。

トカイのテイスティング・最高のハーモニーを持つフォアグラ

トカイの街ではさまざまなワイン蔵でトカイアスーのテイスティングが楽しめます。トカイアスーでなくとも、フルミントという品種は甘みが強く、甘口白ワインがお好きな方にはおすすめ。

トカイアスーやフルミントの数字ごと・そして最高級エッセンシアまでテイスティングでき、気に入ったものがあれば通常のワインの瓶でもペットボトルでも購入可能です。

琥珀色の甘い液体…

トカイアスーは食前・食後ともに楽しめるデザートワインですが、特におすすめのおつまみは、ハンガリー名産であるフォアグラのテリーヌです。

フレッシュフォアグラのグリルはハンガリー名物としてパンチがありますが、冷製のフォアグラテリーヌは本当にトカイアスーとマッチします。料理段階でトカイアスーを投入するテリーヌ・トカイアスー風味もハンガリーではよく見られるおいしい食べ方です。

通常時のお酒ではなく、ちょっとおしゃれな雰囲気を楽しみたい時に少しずついただくトカイアスー。ジェラートにもトカイアスー味というのが存在したり、おいしいバニラアイスにトカイアスーと上質なバルサミコを少しだけ振って楽しむという食べ方もあるんですよ。

これぞハンガリー! の美味を、こちらに訪れた際にはぜひ味わってみてください!