カレーと揚げ物の相性はいい。カツカレー、コロッケカレーは、押しも押されもしない定番メニュー。トッピングとして、唐揚げやエビフライを提供しているカレー店も珍しくない。にもかかわらず、和食を代表する揚げ物の天ぷらは、なぜかカレーとは縁がない。それを見事に実現させているのが、「カレーハウス すぷーん」の「季節の天ぷらカレー」だ。

地産地消の旬の野菜を天ぷらに

「季節の天ぷらカレー」の誕生秘話には、天かすが絡んでいる。「すぷーん」では開業当初しばらくの間、天ぷら粉でカラッと揚げたオニオンリングのフリッターをトッピングとして付けていた。そのため毎日、大量の天かすが出る。

それをある日「ふっと思いついて」、まかないカレーにパラリとかけてみた。「天かすのサクサクッとした食感がカレーに合って、これはイケる!と思いました」と語るのは山田真一郎店主。そして、天かすを天ぷらにバージョンアップさせることで、「季節の天ぷらカレー」が誕生した。

地元の農家で生産された旬のウド。春の訪れを感じさせる味覚だ

「季節の天ぷらカレー」というメニュー名も魅力的だ。ただの“天ぷらカレー”ではなく、“季節”とうたっているところにお客さんは引きつけられる。具材はエビの他に、旬の野菜が盛り込まれるので、「揚げ物は食べたいけど、健康のことも気になる」というモヤモヤを解消してくれる。しかも地産地消の野菜だ。

「この辺りは畑が多く、うちでは地元で採れた新鮮な野菜を使っています」と山田店主。

天ぷらの上に天つゆを寒天で固めたジュレ

“限定メニュー”にしている点も訴求力がある。「すぷーん」では、十数種類のトッピングの中から、お客さんがお好みで選べるメニュースタイルをとり、食べ飽きさせない工夫をしている他、1~2週間おきに限定メニューを提供してリピーターにつなげている。「お客さまの3人に2人は限定メニューをオーダーする」というからその効果は十分。

「季節の天ぷらカレー」は具材を変えて、定期的に提供される限定メニューだが、「初めて召し上がったお客さまも、『カレーと天ぷらの組み合わせは意外だったけど合うね』と言ってくださいます」と評判は上々。

天つゆのジュレは盛り付けのアクセントにもなっている

天ぷらの上に天つゆを寒天で固めたジュレを添えるこだわりも見逃せない。まずは天つゆのジュレで食べ慣れた天ぷらの味を堪能してから、カレールウを付けて味変を楽しめる。

「季節の天ぷらカレー」は、トッピングの揚げ物を天ぷらにするという新発想の他にも、幾重にも工夫が凝らされているからこそ、人気メニューになったといえるだろう。

店舗情報
「カレーハウス すぷーん」
所在地=東京都国分寺市西恋ヶ窪2-6-3
開業=1996年2月
坪数・席数=約8坪・9席
営業時間=月~金11時30分~13時45分、18時~21時15分、土11時30分~14時15分。日曜祝日定休
平均客単価=昼700円~850円
1日平均集客数=昼30人、夜50人

◇外食レストラン新聞の2018年3月5日号の記事を転載しました。