盛岡冷麺、盛岡じゃじゃ麺に椀子そばなどが、岩手・盛岡の名物グルメでは有名だが、地元市民にとって食文化の一つとなっているご当地フードといえば「盛岡コッペパン」だ。食事系からフルーツまで挟む具材を選ばない懐の深さがコッペパンの魅力といえるが、見た目もボリュームも圧巻の存在感を放つ一品が、盛岡製パンの「お子様ランチ」だ。

具たっぷりでお腹も満足

キャベツのコールスローを下に敷き、右側にはスパゲティーナポリタン、左側には卵スプレッドの上にミートボール。仕上げにパセリと真っ赤なタコウインナーをオン。幅20cm弱のコッペパンに、懐かしのお子さまランチが見事に再現されている。

「お子様ランチ」497円(税込み) ナポリタンに粉チーズを一振りするなど完成度が高い。後ろは「盛岡りんごソテーとカスタード」(302円・税込み)

さらには同品注文の客のみクジ引きが実施され、鉛筆などの景品が付いてくるのもうれしい。

「お子様ランチ」を注文するとおもちゃが当たるクジ引きが楽しめる

同商品はさぞお子さま客から大人気だろうと思いきや、「実際にご購入が多いのは40~50代の大人。お子さまへのお土産にお買い上げになる方も確かにいらっしゃると思うのですが、ボリュームがあるので大人の空腹を満たす食事パンとしてのニーズが高いなという感触です」と伊藤慧(けい)店長は語る。

確かにナポリタン60g、卵スプレッド50gなど具材だけでも総重量は150g近くに達し、小さな子どもでは食べきれないほどだ。

また、昨今の外食シーンを振り返ってみれば子連れファミリーが行くのはフードコートやファミリーレストラン。かつて百貨店の食堂レストランで提供していたあの「お子さまランチ」体験のある子どもは圧倒的に少数派で、もはや大人の郷愁の方が強いのかもしれない。

注文を受けてから盛り付けるが作業時間は1分弱。会計を済ませた頃には完了しているというファストフード・チェーン顔負けのクイック・オペレーションで行列のストレスも軽減

行列のヒミツはコッペパンのおいしさ

同店は平日800個、週末となると1200個を売る、行列の絶えない超繁盛店。その理由となるのが商品の柱となっているコッペパンのおいしさだ。しっとりモッチリした食感で、口溶けもいい。何より小麦粉の香ばしい香りがしっかり感じられる。

コッペパンも店内で小麦粉を練るところから自家製しており、1日8~12回焼き上げて新鮮なおいしさを提供。原料となる小麦粉には岩手産のユキチカラを配合して上品な香りを高めているのが老若男女を問わず人気の秘密だ。

同店では常時30種前後の具材バリエーションを用意し、194~497円(税込み)で販売。岩手産のさるなし(ベビーキウイ)や盛岡りんご、糖度15度と甘い南部一朗かぼちゃといった岩手の特産品を挟んだものや、盛岡じゃじゃ麺、前沢牛コロッケといったご当地グルメを挟んだものをラインアップ。

岩手・盛岡を全面にアピールもして盛岡コッペパンの独自性を打ち出している。

平日、週末ともコッペパンを求める客で行列が絶えない。店頭には盛岡の夏祭りである“さんさ踊り”のお囃子をBGMにして、岩手名産食材も並べる。「盛岡のソウルフードとしてのコッペパンとともにアンテナショップとしての役割も担い、復興を支えていきたい」と伊藤店長
【店舗情報】
「(食)盛岡製パン 狛江店」
所在地=東京都狛江市中和泉1-1-1
開業=2017年9月
坪数・席数=15坪・テークアウトのみ
営業時間=10時~19時(売り切れ次第終了)。無休
平均客単価=500円
1日平均販売数=800~1200個

◇外食レストラン新聞の2018年2月5日号の記事を転載しました。