冬は日本酒が一番おいしい季節です。寒いから? もちろんそれもありますが、実はこの時期は、1年でもっとも多くのタイプの日本酒が市場に出回るのです。新米で造った新酒はもちろん、熟成されて旨みが乗ったお酒、酒蔵が満を持して出してくる蔵元最高峰のお酒など、選ぶのもひと苦労です。今回はその中から新年にふさわしいタイプのお酒をご紹介していきたいと思います。

<1>縁起の良いお酒を飲もう

神の酒と書いて「御神酒(おみき)」。日本酒は昔から神様とは切っても切れない存在です。ですから縁起の良い名前も多いですね。鶴、亀、寿、運、福、神など、ラベルを眺めているだけでもご利益がありそうです。

開春 純米超辛口 初しぼり(島根)

でも肝心なのは味ですよね? 私のおすすめは島根県の「開春」。出雲の国で育てられた「神の舞」というお米を使って醸されています。その味わいはまさに超ドライなグレープフルーツ! 特に唐揚げや魚介の天ぷらなど、柑橘を搾った揚げ物と相性が良いです。お試しあれ。

<2>純米のお燗酒を飲もう

もう亡くなられてしまいましたが、日本酒業界の重鎮と言われた故・上原浩氏は「酒は純米、燗ならなお良し」という言葉を残されています。良い造りをした純米酒は(もちろん純米吟醸も純米大吟醸も)、是非お燗にして楽しみたいものです。

特に冬のお料理は味がしっかりしていて温かいものが多いので、お燗酒とは好相性。また、お燗酒は体温に近いため、アルコールが無理なく体内に吸収され、心地よく酔えるのもポイントですね。

七本鎗 純米 80%精米(滋賀)を48℃で

お燗の温度は、日向燗(30℃)、人肌燗(35℃)、ぬる燗(40℃)、上燗(45℃)、熱燗(50℃)、飛び切り燗(55℃~)といろいろありますが、お酒によってベストな温度は違います。また、飲む人の好みや体調、お料理との相性によっても変わってくるので、一つのお酒をいろいろな温度帯で試してみることをお勧めします。

お燗のつけ方も、湯煎(ゆせん)、電子レンジ、直火、そして最近は蒸し燗というのも注目されていますので、こちらもいろいろ試してみてください。よく電子レンジを悪く言う人がいますが、私はそうは思いません。

ご家庭ではまず飲んでもらうのが一番ですから、無理ない範囲で試していただければと思います。日本酒にタブーはありません。電子レンジも美味しくつけられますよ。

<3>しぼりたての新酒を飲もう

1月は新酒ラッシュです! 秋に収穫された新米を使った搾りたての生酒が、酒屋さんの棚に並びます。新酒は必ず冷蔵保管をしている酒屋さんから買いましょう。そして、ご家庭でも必ず冷蔵庫で保管してください。

丁寧に温度管理された新酒は、生命力と躍動感に満ち溢れています。なかには自然の炭酸ガスが残っているものもあり、ぴちぴちとしたフレッシュな口当たりを楽しめますよ。

新酒だからと言って、無理して全部飲む必要はありません。残った分はまた冷蔵庫に入れて、次の機会に楽しみましょう。開けたての時とは表情が変わり、少し角が取れて丸くなっているでしょう。

今年の新酒たち

よく「日本酒は開けてから、どのくらい持つの?」と聞かれますが、それはお酒によってそれぞれ。日が経って良くなるものもあれば、味が落ちるものもあります。でもそれも含めて、1本のお酒がどのように変化していくかを見るのも面白いですね。

古来より、日本酒を飲むことは「神様の領域に近付けるもの」とされてきました。1年の始まりに清らかな心で日本酒(清酒)をたしなむことで、皆様に良き1年が訪れますようお祈りしております。