前回のコラムでご紹介した100年も前のトースターは、ただパン焼き用の電熱線(ニクロム線)がつけられただけのきわめてシンプルな造りでした。
電気コードは、家庭用の炬燵に使われるようなコードと同じものが使われていましたが、昔の商品は今のものに比べて丈夫で長持ちです。なにしろそのシンプルなトースターは、今でも壊れることなく使うことができるのですから。
家庭用電気トースターの大ヒットから、実に多くの家電メーカーが設立され、新聞・雑誌など広告合戦の時代が幕を開けました。

前回の記事はこちら

アメリカの新聞広告で振り返る電気トースター100年の進化

まず、あのエジソンの発明によるジェネラル・エレクトリック社製の電気トースターは、その名もズバリ ”Hot point” でした。

Edison Electric Appliance Co, Inc. , CHICAGO

1920年6月12日付けの広告:―cool summertime cookery―

“寒いときも暑いときも、風通しが悪く息苦しいキッチンよりもっと心地よいテーブルで、季節に応じたお料理をするのはいかがですか?”
“涼しいお部屋や屋外のポーチなど、ソケットがあるところならどこでもできる、心地よいテーブルクッキングはいかがですか?”
といった内容の広告が残っていますが、どんな季節でも主婦が心地よい場所でクッキングできるという提案が魅力の広告となっています。

 

General Electric Company

General Office, Schenectady, NY; Sales Offices in all large cities

1921年10月15日 The Saturday Evening Post への掲載広告

二股ソケットを売り出したときの広告ですが、写真のテーブル上に電気トースター、電気パーコレーターの2つが並べて置かれ、これらを使うためには2つのコンセント差込口が必要であることを、わかりやすく絵で表現しています。

 

Westinghouse、 Westinghouse Electric & Manufacturing Company

1922年12月の広告  The Saturday Evening Postに掲載

“クリスマスギフト用に 何か付加価値のあるものを差し上げてはいかがでしょうか?”
というおすすめ自社製品をラインアップ。
Turnover Toaster:電気トースターからターン(オーバー)トースターに名前を変えて掲載。
The Table Stove:電気トースターだったものがテーブルストーブに名前を変えて掲載。
これをRusell Electric 社ではgrillとして販売をしていました。

 

 Universal

1924年10月11日の広告  Saturday Evening Post に掲載

Reversible Toasterという名称で9ドルで販売:そこには”トーストの両面を一度で焼き上げることができる”というシンプルな広告が載っています。

 

Russell Electric Co.

Executive offices and Factory、340 W. Hurron St., Chicago、.IL;East Offices、51 East 42 nd Street, N.Y.;Canadian office、60 Duchess street, Toronto

1925年8月29日にLibertyに掲載された広告

当時、世界で最も大きなランプ、ソケット、電熱商品の会社と記されております。
シカゴからスタートしたと思われるこの会社は、ニューヨーク、カナダにも支店を併設。
トースターは この頃から3ドル50から4ドル、4ドル50セントに値を下げている(ただデザイン性のあるトースターは9ドル85セントと少し高めの設定)。

売り方としては、朝食に欠かせないコーヒーを沸かすためのパーコレーターとトースターとを並べ、以前はトースターとして売られていた商品をgrillと名付け、これらの3つを一つのセット(いわゆる電化製品セット売り)として9ドル85セントで販売を始めています。この広告の頃から価格戦争に突入した感があります。

 

Edison Electric Appliance Co, Inc.  

A General Electric Organization、5600 West Taylor Street, Chicago,IL;
Factories、Chicago .IL and Ontario,CA: World`s largest manufacturer of electric ranges and household electric heating appliances

1929年12月の広告

Now ! A Slices Automatic Toaster,
Watching……. No Burning !
Keep the Toaster Hot for a Longer Time!

上記の広告ではすでに、トースターが改良を重ねた結果、傍で焼き上がるのを見ていなくても自動的に、焦げることなくしかも同時に2枚のトーストを焼くことができると謳っています。トーストは焼き上がってもしばらくは温かいままです。この広告は、主婦が求めていた問題を解決したトースターが出来上がったことを前面に打ち出した、インパクトのあるものになっています。

当時のトースター広告を見ていると、主婦の心をつかみながら、より心地いい場所での調理法を提案し、彼女たちの問題をどのように解決してあげるかということが大事なポイントではないかと思います。いつの時代でも、相手の問題解決こそがビジネスにつながるのです。