素朴なおいしさの「あわ大福」、たった1日しか持たない理由は
「紀の国屋」は、東京の武蔵村山市に本社を持つ和菓子チェーンだ。現在、東京と神奈川に21店舗を展開している。多摩地域を中心にそれなりに知られた老舗だが、新宿駅の京王百貨店より東側には店舗がないため、東京の住民であっても知らない人は多いだろう。
「紀の国屋」には「相国最中」などいくつかの人気商品があるが、この「あわ大福」もその一つであり、そのおいしさを愛するファンは多い。
「あわ大福」は、粟を混ぜたもち米で作った大ぶりな大福で、ほのかに黄色いもちはとても軟らかく、中には大納言の粒あんが入っている。もちとあんのバランスがちょうどよいので甘すぎず、かといって上品すぎないボリュームで“おやつ”としての満足度も高い。
しかし何といってもこの商品のユニークな特徴は、添加物を一切使用していないため消費期限が1日しかないことだ。幼児のほっぺたのように軟らかなもちは、購入した当日の夜にはすでに硬くなり始め、翌日にはすっかりカチカチになってしまう。もちろん電子レンジやオーブンなどで熱を加えれば、また違った風味で食べられるのだが、購入した時の軟らかなもちに戻ることはない。
そんな商品だから、その日に製造した分を店舗のみで販売する。大好物だからといって、たくさん買って翌日以降も食べるというわけにはいかないし、儀礼的な贈答品にも向かない。ただただ自分がその日に食べる分か、ちょっとした手土産のために購入する生菓子である。
そんな効率の悪い商品ではあるが、だからこそ他店には絶対にまねができない。おそらく店舗網も、これ以上範囲を広げたらこの商品の販売が難しいのだろう。商品の差別化とはこういうことだ、という見本のようなロングセラーなのだ。
◆店舗情報
「和菓子 紀の国屋」
所在地=東京都武蔵村山市三ツ藤1-93-2(本店)他
◇外食レストラン新聞の2017年11月6日号の記事を転載しました。
タブロイド判16~24頁・月刊・オールカラー。専門紙でありながらフリーペーパーという新聞業界初のコンセプトで外食専門紙トップの発行部数5万8000部を誇ります。広告効果も抜群。ぜひお試しください。
詳しくはこちら
コメント
記事コメント投稿サービス利用規約に同意の上ご利用ください。