カレーが日本人の国民食であることに異論の余地はない。外食としても、内食としても、カレーほど食されている料理はないといっていいだろう。これほど見慣れたメニューを「当店ならではのオリジナルメニュー」に進化させることは至難の業。この難問を見事にクリアしたのが、「ジェイズカレー」の「ジェイズ丼」だ。

山頂にひとさじ入れると…

「ジェイズ丼」は1日限定100食で、ほぼ毎日完売する看板メニュー。その一皿に込められた工夫と努力を知れば、知るほど、“売れるメニュー”がいかにして誕生するかに納得する。

「ジェイズ丼」のコンセプトは、“日本のカレーの進化形”。「日本を象徴するものといえば富士山。そこで雪化粧の富士山をイメージしてみました」と話すのは横矢充彦社長。日本=富士山という極めてシンプルな発想だが、従来のカレーとはまったく異なる独創的盛り付けにまず驚かされる。「インスタ映えを狙ったわけではありません」とのことだが、これが運ばれてきたら撮影せずにはいられない。

ひとさじ入れると山頂に埋め込められた温泉卵から黄身が流れ出す

山頂にひとさじ入れると、中から溶岩ならぬ温泉卵がトロリと流れ出す仕掛けだ。ここでまた歓声が起こる。温泉卵は62.5℃で45分加熱し、絶妙の溶け出し具合だ。

富士山形のライスをローストビーフで包み込み、山頂に温泉卵を埋め込む

仕掛けはまだある。富士山形のライスの周りをローストビーフが包み込んでいることも、外見からでは分からない。「お客さまにサプライズを提供するには、ネタを“隠す”というのが一つの方法ですね」と横矢社長。ローストビーフは、アンガス牛の内ももを真空低温調理で4時間以上かけて作る。普通盛り1皿で7~8枚、約100g。

カレールウも自家製。オイスターソース、メイプルシロップ、デーツシロップなどの隠し味でコクを出している。

雪化粧はポテトクリームソース

さて、一番気になるのが雪化粧の正体。「ベシャメルソース?」と考えるのが一般的だが、定番通りではヒットメニューにはならない。答えはポテトクリームソース。カレーになくてはならいジャガイモをここで投入するという趣向だ。北海道産のジャガイモでマッシュポテトを作り生クリーム、牛乳、バターを加えてソース状にする。

カレールウとポテトクリームソースの二重がけをして、黒コショウを山頂にパラリ

カレー、ローストビーフ、ポテトクリームソース、この三つが一体となることで、カレーでありながら、カレーを超えるメニューが誕生した。

富士山の型は、実はケーキ用のもの。大盛用(左)、普通盛用(右)

●店舗情報
「ジェイズカレー」
経営=808zip
店舗所在地= 東京都足立区千住3-60-16
開業=2014年5月
坪数・席数=6坪・9席
営業時間=11時30分~14時30分、17時30分~22時。不定休
平均客単価=昼・夜1050円
1日平均集客数=90~150人

◇外食レストラン新聞の2017年11月6日号の記事を転載しました。