特定NPO法人国連WFP協会(安藤宏基会長)は13日、東京都内でWFPエッセイコンテストの表彰式(写真)を行った。今回は「おなかいっぱい幸せごはん」をテーマに、満足に食べることができる幸せへの感謝と世界に存在する飢餓の問題を思うきっかけにしてもらった。全国から過去最多となる1万9075通の応募があり、各部門賞、審査員特別賞など6作品(ほかに佳作15作品)が決定した。最優秀作品のWFP賞は、東京都の岡田萌(おかだ・もえ)さんの作品「ありがとうの味」が受賞した。

コンテストでは、応募1作品につき給食約4日分(120円)が協力企業4社(昭和産業・トヨタ自動車・日清食品ホールディングス・三菱商事)から寄付される。寄付金額は228万9000円(1社当たり57万2250円)となり、およそ7万6300人の子どもたちに栄養価の高い給食を届けることができた。

◆WFP賞(最優秀賞)
「ありがとうの味」 東京都・玉川学園高等部3年 岡田萌(おかだ・もえ)さん

私の家は五歳のときから、母と私の二人で暮らしている。それから今まで、母はほぼ毎日、夜遅くまで仕事をしながら私を十三年間一人で育ててきてくれた。

母は休日もいそがしく、私はあまり母の作る朝ごはんや夜ごはんを食べる回数が少なくなっていった。小学生のころ、遠足でお弁当を持っていくことになっていた。前日の夜もいそがしそうに遅くまで帰ってこない母のことが心配になり、お弁当が必要だということを私は母に言えずにいた。母の帰りを待っていたとき、母から一本の電話が入った。

「明日、お弁当に何入れて欲しいか言っていいよ。何でも作ってあげる。」
私はこの母の声を聞いて、今まで言えなかった寂しさと、感謝と、嬉しさがあふれて涙が止まらなかった。

次の日の遠足で母からのお弁当を開いたとき、私はとても胸がいっぱいになった。お弁当箱の中は私の好きな物ばかりがカラフルに並べられていて、色々なことを考えながら、そして私のことを想いながら作っている母の姿が浮かんだからだ。そのとき食べたお弁当は、きっと誰のものよりもおいしく、温かいものだった。

その日の夜、私は母の帰りを待ちながら、母のためのおにぎりをいくつか作った。家に帰ってきた母は目に涙をうかべながら、ありがとうと笑ってくれた。料理がただでさえ苦手な小学生の私が作ったおにぎりはきっと、塩加減もめちゃくちゃなものだっただろう。それでも母は、おいしい、とくり返しながら私の作った“ありがとう味”のおにぎりを嬉しそうに食べてくれた。だから私にとっておにぎりは、特別なものなのだ。(原文)

●湯川れい子選考委員長の話
さまざまな事情から日本には母子家庭が多い。朝も夜もなく働かなければ、母親の腕ひとつで子どもを育てるのは大変な作業で、報われることも少ない。そんな事情が胸に迫る一文だと思う。「おにぎり」は、日本の食の原点であると、あらためて心に染みた。思わずホロリと涙しながら、幸せとは愛情に他ならないと大切な事を教えてもらった気がする。

〈各部門の入賞作品〉(敬称略)
▽小学生部門=「分けられなかったお弁当」兼八美汐(神奈川県・湘南白百合学園小学校)
▽中学生・高校生部門=「愛を注ぐ」谷澤文礼(東京都・開成中学校)
▽18歳以上部門=「命つなぐ食事」松本歩実(栃木県)
▽審査員特別賞(小学生部門)=「残り物から『想う』」丸本ありす(神奈川県・カリタス小学校)
▽(中学生・高校生部門)=「ご飯に合う最高のスパイス」常松奏音(東京都・巣鴨中学校)
▽(18歳以上部門)=「誓いのおにぎり」矢鳴蘭々海(大阪府)

WFPエッセイコンテスト

◇日本食糧新聞の2017年10月20日号の記事を転載しました。