ここ数年、猛暑が続く中、井関食品(大阪府豊中市)の熱中症対策食品が好調だ。主力の「熱中飴」と「熱中飴タブレット」が発売以来伸長を続け、現在、同商品群が売上げの約4割を支えるまでに成長した。

同品は、既存の「塩飴」の約10倍の1粒当たり約300mgの塩を投入。「あめ屋なので、まずいものは作れない」(井関優社長)とレモン味にし、試行錯誤の末、おいしくなめられる「熱中飴」が完成した。その後、バリエーションとして梅塩味なども追加された。

井関社長は「昔から塩の入ったあめはあったが、甘さを引き立てるために入れるもので、熱中症対策ではなかった。15年以上前、出入りしていた電気業者が『夏場に塩あめっていいね』とぼそっとつぶやいたのが発想のきっかけ。それから何年かして堺市の建築業者から『現場で塩を持たせてなめるように言っているがなめない。塩の入ったあめを作ることはできないか』との依頼もあり、熱中症対策のための塩あめ開発に着手した」と開発の経緯を振り返った。

発売後、ネットニュースに取り上げられると、その後TVでも紹介され、爆発的に知名度が広がった。ヘルメットや安全靴などを扱う安全用品業者が主な販売チャネルだったが、その後、スーパーなどでの取り扱いも増え、建設現場だけでなく、スポーツ愛好者などにも受け入れられた。

今年の熱中飴の売上げは、昨年が特に好調だった反動もあり、やや減少したものの、熱中飴タブレットがアスクルやカウネットなどの事務用品を扱う通販会社で毎年販売を伸ばしている。

現在は、あめが約7割、タブレットが約3割の売上げ構成。将来的には保管や携帯時に溶けにくいタブレットのさらなる成長に期待を寄せる。

また、新たな熱中症対策食品の開発にも取り組んでいて、近くベールを脱ぐという。

同社は1945年に菓子問屋「井関商店」として開業し、70年に菓子製造業に業種を変更。今から約25年前に、レンコン、大根などの野菜の絞り汁をあめに炊き込む手法を開発。神社参道の土産物として売り出した商品は、関西を中心に人気に火が付きスーパーなどにも販売チャネルを広げ、成長した。

その後の熱中飴の全国的ヒットもあり、「もともとはせんべいを作って、近所のたばこ屋やパン屋に卸して回っていた」(同社長)というローカル企業だったが、全国区の知名度を誇るあめ製造業者へ大きく飛躍した。

◇日本食糧新聞の2017年9月1日号の記事を転載しました。