起業してからの10年間、福岡の幼稚園、小学校、高校、専門学校、大学で、その年齢に合わせた食育の授業をしています。どの年齢でも食に興味を持ち、正しい知識を備えることはとても重要ですが、やはり早い段階での食育はその後の人生を健康に過ごせるかどうかのポイントになります。
給食の献立をお手伝いしている幼稚園の給食どきにお邪魔して、園児と一緒に食の大切さを勉強してきました。未来を担う子どもたちに“食べることは生きること”をどうやれば分かりやすく伝えられるか、管理栄養士の視点からレポートします。

給食はおいしく、楽しく学べる食育の場。必要な栄養素が含まれているのでしっかり食べよう

幼稚園の給食は厚生労働省と文部科学省から栄養価が出ていて、その約1/3を充足するように決められています。

ビタミンやミネラルバランスも大切ですが、園児にとって重要なのはエネルギー、たんぱく質、カルシウム。毎日の給食は体を作る源になるので、おいしく食べてもらえるように腕をふるいます。

ある日の給食を紹介しますね。

献立の基準値(お昼:エネルギー425kcal, たんぱく質12g )

チキンカレー、スティックきゅうり、パイン、かみかみ、牛乳
422kcal (充足率99.3%) たんぱく質11.1g(充足率92.5%)

ごはん、豚バラと大豆の煮込み、果物、かみかみ、牛乳
426kcal (充足率100.2%) たんぱく質12.9g(充足率107.5%)

ごはん、納豆かき揚げ、みそ汁、果物、かみかみ、牛乳
392kcal (充足率92.2%) たんぱく質12.3g(充足率102.5%)

成長期にはカルシウムが重要なので、牛乳は必須です。自分のコップについでもらいますが、目安は120ml。これでカルシウムは132mg。

果物はエネルギー、ビタミン補給に毎日食べます。ご飯の量が食べられない子も、果物は好きなので栄養補給には最適です。ただし、ご飯、おかずを食べてから果物を食べましょうと教えています。果物で満腹になって、ご飯、おかずが食べられないとダメですから。苦手なものがあっても必ず一口は食べてみようと声かけをします。

「ピーマンは苦いけど、緑の色が体を強くしてくれるから、ちょっとだけでも食べてみようね」。食べる理由を教えてあげることで、苦手なものにも挑戦して、食べられるものも増えていきます。家では食べられないものも幼稚園では食べる!とお母さんが驚かれることも多いんですよ。

その例が、納豆!
実は幼稚園の人気のメニューは、納豆のかきあげ。鶏のからあげを抜いて、2位なんです。納豆が苦手な子でも食べられるように工夫されています。

苦手なものを食べることができると自信がついて、食べることが楽しみになっていきます。毎日の給食自体がまさに食育なんですね。

納豆のかきあげは、子どもも大人もパクパク食べてしまいます。

ご家族からも、納豆のかきあげを作りたいと毎年レシピのリクエストがあります。納豆が苦手な子でも食べられるので、みなさんもぜひ作ってみてください。

炭水化物(じゃがいも)、脂質(油)、たんぱく質(納豆)、ビタミン(にんじん)、ミネラル(ちりめんじゃこ)の5大栄養素がバランスよく入っているので、体にも嬉しい健康おかずです。

納豆のかきあげのレシピ

<材料>
・じゃがいも 200g (小2)
・にんじん 20g
・納豆 1パック+たれ
・ちりめんじゃこ 大さじ2
・小麦粉 大さじ4
・片栗粉 大さじ2
・水 大さじ2

<作り方>

  1. じゃがいもは厚さ5mmに千切りして、水にさらす。にんじんも千切りにする。
  2. じゃがいもはよく水を切り、ボウルに材料を全部入れて、混ぜ合わせる。
  3. ②を食べやすい大きさにして、170℃の油でからりと揚げたら出来上がり。
給食を全部食べ終わった人は、果物おかわりじゃんけんに参加できます

体は食事でできていることを学ぼう。献立表には、その日の食材と主な働きが書かれています

食材には3つの役割があります。

  1. 血や肉、骨を作る:たんぱく質、ミネラル
  2. 熱や力のもとになる:炭水化物、脂質
  3. 体の調子を整える:ビタミン

今日の献立はなんだろう? と献立表を見ると、ご家族も食材の働きがわかり、子どもの元気で強いカラダができることが実感できますね。

給食を食べる前には日直さんが献立の紹介をして、給食の先生、生産者さん、食事に感謝をしてからいただきます。

園児たちの「いただきます!」の声からも、給食の楽しさが伝わってくるのです。

献立表には、食育が盛りだくさん。食事の大切さが学べます

「かみかみ」の正体。それは、噛む力をおいしく身につける料理です

献立に毎日出てくる、「かみかみ」。そんな料理があるのかと思われる方も多いですよね。
その正体は、カリッカリに炒ったイリコ・たくあん・昆布。

しっかりと噛む力をつける&カルシウム補給のために、毎日イリコ・昆布・たくあんのどれかを給食に取り入れています。特にイリコは調理員さんたちが時間をかけて、じっくりと弱火で炒ってくれるので、とってもおいしく、子どもたちの大好物。

おいしく、自然に噛む力を身につける、これも食育です。

「かみかみ」の効果はすごい!

・あごを発達させる。歯並びや姿勢にも影響があります。
・唾液の分泌が増える。食べ物の消化吸収を良くし、抗菌作用で虫歯予防になります。
・脳を発達させる。脳が刺激されて、活性化します。
・食べ過ぎを防ぐ。満腹中枢が刺激されて、満腹感が得られます。子どもの肥満予防になります。

ファーストフードやお菓子など軟らかいものばかり食べるようになったので、子どもの噛む力が弱くなってきています。給食でしっかりと噛む力をつけることで、正しい食べ方を身につける、これこそ生涯に役立つ食育の取り組みですね!