100年たっても現役、パンの食べ方の歴史を語る電気トースター
ニューヨーク、アッパーウエストにある小学校の校庭で、毎週日曜日フリーマーケットが開かれます。100年前の古い電気トースターを一台一台丁寧にクリーニングし、ピカピカにして使える状態でパンを焼き、通り過ぎる人々にそのパンを食べさせては興味を持たせていた白髪にベレー帽の叔父さんとそこで出会いました。
買い集めたトースターは数十台に
その焼きたてのパンの香りはマーケット中に漂い、彼のブースはあっという間に人だかりになりました。アンティークトースターのコレクターとして全米でも有名な方だったそうですが、体を壊したことから自身のコレクションのトースターを手放し始めたちょうどその頃に、私は彼に出会ったのです。
100年前のトースターが今でも使える?これには誰もがびっくりします。古いトースターに魅せられた私は、彼のコレクションの一部を譲り受けることになりました。少しずつ買い求めたトースターは数十台になりましたが、トースターは作られた年代によってひとつひとつに物語のあることが分かります。
年代順に並べてみますと、その時その時に考え出された見事なまでのアイデアにさらに一層の改良が重ねられ、徐々に完成されたものになってゆく過程を楽しむことができるのです。
ガス式から電気トースターへ
電気トースターは、ニュージャージーのメロンパーク研究所の研究員だったトーマス・エジソンにより最初に発明され実用化されたものと言われております。電気トースターが作られる前のガス式のものは、丸い天板の4か所に太い針金を取り付け、その上にのせたパンをオーブンで焼くという単純なものでした。
この鉄板式のトースターは、1900年頃にWolff Appliance Corp[Long island city, NY..U.S.A ,]によって作られ、特許も取得されています(丸い天板の写真)。
女性のヘアピンからアイデア
その後、1909年に最初の電気トースターがGeneral Electric社から販売されました。中に電熱線がつけられた簡単な構造ですが、パンの受け皿となるところに太い針金がいくつも並べられています。これは女性のヘアピンからのアイデアだそうです。確かに、昔の女性用の太いヘアピンが並べられているようにもみえます。(写真)
電気トースターオーブンの誕生
当時の電気トースターは、まずパンの片面を焼き、そこが焼き上がれば自分でひっくり返して反対側も焼き上げるという手間暇のかかるもので、そのうえにパンを焦がさないため目が離せないという欠点もありました。
1930年代に入ると、フランスパンがグロサリーストアーで売られるようになり、このパンが大ヒットしたことで家庭用電気トースターの普及にも一気に弾みがつき、トースター大ヒットの時代がやってきました。電気トースターオーブンの誕生です。(写真)
この頃には両面が同時に焼けるように改良されるなど、トースターには数々のアイデアが詰め込まれるようになりました。ドアフレームがつけられ、トースターのデザインも目を見張るような素敵なものになってきました。そしてこの頃にポップアップトースターも誕生したのです。
宣伝・広告の時代も幕開け
General Electric に続き、Westingh House,
Russell Electric、Universalなど、かなりの数の家電メーカーが次々に設立され、ビジネスチャンスでもあるトースターを販売するようになりました。いよいよ価格競争の始まりです。
同時に各メーカーは、自社製品販売のために新聞や雑誌に広告を打つようになっていきました。いかに自社のブランドをアピールするかという、宣伝・広告の時代も幕を開けました。
そこで次回は、家庭で使われ始めた頃のトースターの各社の実際の広告をご紹介いたします。キャッチコピーなどは今でもそのまま使える興味深い内容となっております。これをみておりますと、時代が変わっても人が興味を持つ言葉は変わらないことが実感されます。当時の広告をそのままご紹介させていただきますのでぜひご期待ください。
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