茨城県の霞ヶ浦(湖)周辺には、ファストフードの自動販売機、いわゆるオートスナックが古くから点在している。一説によると、まだコンビニがない時代、霞ヶ浦に来る釣り客でにぎわった経緯があり、その名残なのだという。とはいえ、いまだ地元からの支持は根強く、休日にはレトロマニアが多数訪れるなど、にぎわいが再燃している。その目玉が「あらいやオートコーナー」の「弁当自動販売機」だ。

牛乳販売店のサイドビジネス

「あらいやオートコーナー」の創業は1972年。牛乳販売店を営む荒井屋の鈴木守店主(76歳)が、サイドビジネスとして国道51号線沿いに立地する自宅隣に出店した。当初から自販機で弁当を販売しており、かつてはカレー、焼きそば、たこ焼きなども同じ自販機で売っていたが、30年ほど前、売れ筋の弁当だけに落ち着いたという。

自販機の保温は60~70℃

弁当は「焼肉弁当」「鶏唐揚げ弁当」「ヒレカツ弁当」の3品。肉料理、白飯、佃煮というシンプルな組み合わせで、いずれも300円(税込み)。

自販機の保温は保健所から指導された60~70℃に設定されており、隣接する厨房で作ったホカホカの弁当を1~2時間おきに補充している。弁当が乾燥しないように「容器にラップを巻いてからふたをする」という工夫がユニークだ。

レトロマニアのまとめ買いも

午前8~9時に弁当を自販機に補充。様子を見ながら補充を繰り返し、午後3時~5時には販売終了。販売数は平日100~150個、休日200~250個だという。販売構成比は焼肉4割、唐揚げ3割、ヒレカツ3割。

「レトロマニアの遠方客が来るようになってから、まとめ買いされることもあり、販売数の予測が難しい」(鈴木店主)というのが悩みだ。また、盆や正月には、この弁当を懐かしむ帰省客が多く訪れ、「休もうにも休めない」と苦笑いする。最盛期は24時間営業だったが、作り手が減ったため、現在は当日の販売数を決めて、売り切り次第、閉店だという。

弁当が補充される自販機の内部と鈴木守店主。弁当補充は約100個まで可能。弁当が取り出し口に滑り出しやすいよう、弁当を薄紙で包んでいる

故障知らずのシンプル構造

自販機の保温方法は、弁当を挟む発熱板を加熱してファンで熱気を機内に充満させる仕組み。「昔の機械だから構造が単純。創業以来ほとんど故障がない」(鈴木店主)という。

自販機の製造元は小型精密工作機械メーカーのツガミ社。同社広報に詳細を問い合わせたところ、メンテナンスを含め現在の取り扱いはなく、販売実績などの資料も皆無とのこと。それだけに現存機の歴史的価値は年々高まりそうだ。

◆店舗概要
「あらいやオートコーナー」 茨城県稲敷市境島529

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ローカル名物紀行「あらいやオートコーナー」 – YouTube

◇外食レストラン新聞の2017年10月2日号の記事を転載しました。