39歳で若年性認知症と診断された夫とその家族の9年間の軌跡を、実話をベースに描いた感動作『オレンジ・ランプ』。夫と共に前を向く妻・真央を演じた貫地谷しほりさんが映画の見どころや作品への想い、さらに最近ハマっている朝食、大好きな夏野菜についても語ってくれました。

「こんな明るい実話があるの?」と撮影中は疑っていました

若年性認知症を扱った作品には悲しいイメージを持っていましたが、『オレンジ・ランプ』は、前向きで明るいお話です。いま、母が認知症の祖母の介護をしていることもあり、この作品を通して、認知症になっても明るい世界があることを伝えられたらと思い映画のオファーを受けました。

撮影中は、実話だと分かっていながらも「こんなにいい人ばかりの世界は奇跡で、明るい話はファンタジーでは?」と、少し疑っていたんです(笑)。でも試写後に、本作のモデルとなった丹野智文さんが号泣しながら「そのままだ」と伝えてくださって。会社も家族も友達も、みんなが理解してくれるやさしくて明るい世の中が本当にあることに驚いたと同時に、とても励みになりました。この奇跡の実話が当たり前になる世の中になればいいなと思います。

真央という役柄について、監督からは「とにかく明るい奥さんを演じてほしい」と言われていたんです。でも、どの程度明るく演じればいいのか、どこまで感情を出せばいいのかという加減はすごく悩みました。私だったらイラッとしてしまうようなことも、真央は怒らないんですよ。夫に対しても心配なはずなのに「自分のことは自分でやってもらう」と決断したり。本当に強くて前向きな女性だと思いました。

丹野さんには、撮影中に実際にお会いしました。奥さまの話などはあえて聞かず、世間話をしていました。言われなければ若年性認知症だと分からないくらいで、本当に驚きました。

貫地谷しほりさん

作品を通して知ってほしい認知症の方への言葉や行政の支援

丹野さんを演じた和田正人さんとは2度目の共演でした。役柄についてはあまり話をしなかったのですが、和田さんご自身がお父さんでもあるので、撮影中は安心感がありましたし、とても頼もしかったです。1人の人間として積み重ねてきたものが、お芝居にも出ていると感じました。

真央がここまで明るくいることができたのは、2人の子どもの存在があったからだと思うんです。子どもたちが真っすぐな気持ちでお父さんを心配するシーンには心を動かされました。

私自身、昔から家族の中では頼もしい一員でありたいと思っています。何かあった時に、私が指針を示せるようになれたらいいなって。夫は、一番の親友でもあります。秘密がなさすぎるほど、何でも話せる関係。だから、何があっても大丈夫だと思っています。

作品を通して思ったのは、認知症について知っておくのが大事だということです。どんな言葉が認知症の方の自尊心を傷つけ、どういった行政の支援があるのかを、この映画を見て知ってもらえたらと思います。相談できるところがあると心に留めておけば、実際に自分の身に起きた時に、だいぶ違いますよね。

いつも明るい真央が、自分の気持ちがあふれ出し泣いてしまうシーンがあります。介護をする人は、どうしても自分のことが後回しになってしまうと思うんです。でも、認知症に限らず、どんな介護であっても、1人で抱え込まず、我慢しないことが大事だと思います。

夏野菜の中でも大好きなオクラ スーパーにあれば必ず買います!

劇中には、夫婦でコーヒーを味わうシーンが何度か出てきます。撮影中は、コーヒーの香りに包まれた、ほっとするシーンでもありました。香りは記憶にも残るので、丹野さん夫婦はコーヒーを飲みながら一緒に過ごした時間がきっと深く心に残っているんだと思います。家族でカレーを食べるシーンでは、カットがかかってもみんなでそのまま食べ続けていました。これって、映画やドラマあるあるなんですよ(笑)。

普段の食事の中で、最近ハマっているのは、朝ごはんにアボカドトーストをつくって食べることです。丸いパンを切ってトーストし、スライスしたアボカドとトマトをのせて、塩をパラパラッとふればできあがり。身体のことを考えて、パンは近所のパン屋さんで買った全粒粉のパンを、塩はむくみにくいと聞いたピンクソルトを使っています。ボリュームがあり、アボカドには脂質が多いので満足感もあるんですよ。このトーストくらいの量が1日のスタートにはちょうどいいと分かったので、定番にしています。

夏野菜の中では、オクラが大好きです。ゆでずに、生のままスライサーで薄く切って、かつおぶしとしょうゆをかけて食べるのがお気に入りですね。夫もオクラ好きなので、スーパーで見つけたら必ず買っています。

最近、先輩の女優さんに教えていただいたのが、健康のためには食べ過ぎないのが大事だということ。ついついあったら全部食べてしまうのですが、少し軽めの朝ごはんにした時に体調がいいと実感したんですよ。身体にいいものを取ることも大事だとは思いますが、まずは食べ過ぎないように心がけています。

〈プロフィル〉
かんじや・しほり 1985年12月12日生まれ、東京都出身。2002年映画デビュー、2004年『スウィングガールズ』で注目を集める。2007年NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』で初主演を務め、2013年初主演映画『くちづけ』で第56回ブルーリボン賞・主演女優賞を受賞。テレビ、映画、舞台にとどまらず、声優などさまざまな分野で幅広く活躍。

※ヘアメイク:ICHIKI KITA(Permanent) スタイリスト:mick(Koa Hole inc.)
ジャケット¥69,300、ベスト¥42,900(suzuki takayuki TEL03-6821-6701)、パンツ¥25,300(MEYAME〈ソークロニクル〉TEL03-5486-8009)、ピアス¥6,600(AMOR http://aikodama.com)

(C)2022「オレンジ・ランプ」製作委員会
(C)2022「オレンジ・ランプ」製作委員会

映画『オレンジ・ランプ』6月30日全国公開
「39歳、パパが認知症!? どうする、私?」若年性認知症と診断された夫とその妻の9年間の軌跡を、働きながら講演活動を続けている丹野智文さんの実話に基づき描き出す、やさしさに満ちた希望と再生の物語。
[キャスト] 貫地谷しほり、和田正人、伊嵜充則、山田雅人、赤間麻里子、赤井英和、中尾ミエ[監督]三原光尋[企画・脚本・プロデュース]山国秀幸[脚本]金杉弘子[原作]山国秀幸「オレンジ・ランプ」(幻冬舎文庫)[配給]ギャガ

◇◇百菜元気新聞の2023年7月1日号の記事を転載しました。