数々のテレビドラマやバラエティでも活躍する石野真子さん。5月7日から公開中の、鹿児島県薩摩川内市の伝統行事「川内大綱引(せんだいおおつなひき)」を舞台にした映画『大綱引の恋』では、主人公の母を演じます。本作は、家族を題材にした映画を数多く手がけた佐々部清監督の遺作に。石野さんに映画の見どころ、監督や現場での話、さらにご自身の食生活について伺いました。

いまだからこそ伝統行事の素晴らしさを味わってほしい

地方には素晴らしいお祭りや行事がたくさんありますよね。ただ、この作品のお話をいただくまで、題材になっている「川内大綱引」(以下、大綱引)のことは正直知りませんでした。

大綱引は、3000人もの男性が上半身裸でサラシを巻いて、綱を引き合い、ぶつかり合う勇敢なお祭り。普段離れた地に住んでいる人も、大綱引のために駆けつけるんです。老若男女、みんなで綱を引きながら、心の底から叫んで、楽しんで、発散しながらも、きっと浄化されるのでしょうね。上方と下方に分かれて、2時間ほどかけて大綱引を行うのですが、そこに集まる人々の想いが伝わってきてとても感動しますね。

私がこの作品で演じたのは、主人公である鳶職の跡取りの母。家族、その周りの人、みんなを信じて温かく見守る、強い女性でした。息子は不器用ながらもお母さん思いで、こんな息子を持てたら最高じゃないかなと(笑)。

一番印象に残っているのは、やはり大綱引のシーンです。本番さながらに再現し、さらにリアリティを追求するために、実際に行われた大綱引の模様も加わっています。太鼓をたたく息子がとにかくかっこいいんです! 大綱引の面白さが伝わると思います。

(C)2020「大綱引の恋」フィルムパートナーズ

撮影中に通った地元の居酒屋 優しい女将と家庭的な料理が思い出に

佐々部清監督とは『約束のステージ』というドラマでご一緒した縁があり、この作品でも声をかけてくださいました。監督は、とても優しく、温かい雰囲気の方。オファーをいただいた時は、率直にうれしかったですね。本作品が監督の遺作になってしまい、まさか、まさかのことでした。

撮影は2019年9月頃。2週間ほどのスケジュールでしたが、出番のないお休みの日にはバスに乗って薩摩川内市内を散策しました。のどかな時間が流れる中、川内川の河原でぼーっとしたり、温泉に行ったり、いろいろと楽しみましたね。

撮影中、毎日のように通っていたのが居酒屋「綱ごころ」です。大綱引にも縁のあるご家族が切り盛りしているお店で、現地の方で知らない人はいないんじゃないかな。女将さんが優しくて、家族のように迎えてくれました。家庭的なおでんや餃子など、どの料理もおいしかったですね。今日は撮影で疲れただろうからと、胃にやさしいものをつくってくれたこともあったり。その店に行けば、必ず俳優やスタッフに会えるので、みんなで囲む食事は、楽しかったですね。

オススメ料理は「ルッコラお揚げ」

普段の食生活では、野菜を切らすことはありません。野菜はどれも大好きで、冷蔵庫には、キャベツ、きゅうり、みょうが、ミニトマト、三つ葉…とたくさん入っています。昨日つくったのは「ルッコラお揚げ」。魚グリルで焦げ目がつく程度にあぶった油揚げを短冊切りにして、ルッコラやクレソンと混ぜ、レモン汁と削ったパルミジャーノチーズを加えれば完成です。オリジナル料理ではないんですけど、すごくおいしいですよ。

三つ葉を買ったのは、三つ葉とタコをオリーブオイルとにんにく、塩でさっとあえた料理をつくってみたいと思ったから。テレビや本を見て、おいしそうだなと思うレシピは必ず試しますね。

自宅のテラスでは、いちじくとブルーベリーを育てています。いちじくは夏に実がなります。小さな苗だったこともあり、昨年の収穫は2個(笑)。ブルーベリーは鉢植えなので植え替える必要がなく、丈夫だから育てるのは意外と簡単です。熟した順に摘んでいくのですが、鳥が先に食べてしまうか、私が先に摘むかの争いで(笑)。楽しみだったので、数えながら食べていたら、結局、28個食べることができました。

早くお祭りが復活できるような日常に戻ればと思っています。今の状況が普通になってしまったら、子どもたちは、伝統行事やお祭りを知らないままになってしまいますよね。それは寂しいことだし、日本古来の大切な神事だから経験してほしい。いまだからこそ、伝統行事の楽しさや感動が伝わる、こういった映画が大事なんじゃないかなと思います。

<プロフィール>
いしの・まこ 1961年、兵庫県生まれ。77年、日本テレビ系「スター誕生」で合格し、78年「狼なんか怖くない」で歌手デビュー。その年の各音楽祭の新人賞を総なめにする。女優としての活躍も目覚ましく、近年の主な出演作はTVドラマ『ハラスメントゲーム』(18/TX)、『約束のステージ』(19/YTV)、『恋は続くよどこまでも(20/TBS)』、『殴り愛、炎』(21/EX)、映画『singlemom 優しい家族』(18)、『エースになるっちゃ』(20)など多数。

映画『大綱引の恋』5月7日から全国公開中

【Story】鹿児島県薩摩川内市に400年以上続く、3000人が綱を引き合う勇壮な「川内大綱引」に青春をかける鳶の跡取りと、甑島(こしきしま)の診療所に勤務する韓国人女性研修医との切ない恋、そして2人を取り巻く家族模様を描く。「結婚とは?」「家族とは?」「覚悟とは?」に迫る感動作。

[キャスト]三浦貴大 知英 比嘉愛未 中村優一 松本若菜 西田聖志郎 朝加真由美 升毅 石野真子ほか
[監督]佐々部清 [脚本]篠原高志 [企画・製作]西田聖志郎

◇百菜元気新聞の2021年5月1日号の記事を転載しました。