ユニークな店名の「鯖なのに。」は、茨城県波崎にある老舗干物店「越田商店」の「サバ文化干し」を使用する鯖の塩焼き専門店。「特製鯖茶漬け」は、当初、鯖の半身の半分をそのままご飯の上にのせていた。「どうやって食べたらいいのか一瞬戸惑う方や、箸で身をほぐすのに手間取っている方がいらして、ある時ほぐしたものをお出ししたら喜ばれたんですね」と田代雅之店長は言う。「召し上がる様子を観察していれば、お客さんのニーズは自然と分かります」。

「映え」より食べやすさを優先

見栄えという点では、鯖が形のままのっていた方が“映え”ていたかもしれない。しかし、食べやすさという点ではほぐし身の方がはるかに勝る。

1尾分の半身2枚で4食分。焼いた鯖干しを丁寧にほぐして骨と皮を取り、腹と背の部分が1食分に均等に混ざるようにサクッと混ぜる。ご飯は鯖のほぐし身を盛りやすいように台状に形を整え、刻み海苔をパラリ。

ご飯の土台を作り、刻み海苔をパラリ。ここに鯖のほぐし身を中高に盛る

周りにはあられを散らす。鯖のほぐし身の盛り方は、和食の基本の中高盛り。刻んだネギと大葉を散らして完成だ。

お客さんがだしを注ぐと、鯖のほぐし身がだしの池に浮いた小島のようにも見える。水面(みなも)にはあられ、ネギ、大葉がゆらゆらと…食べやすさだけではなく、風情を演出した盛り付けといえるだろう。

●店舗情報
「鯖なのに。」 所在地=東京都大田区大森北1-7-1

◇外食レストラン新聞の2020年10月号の記事を転載しました。