一流ホテルなど業務用ルートを主要得意先とする北海道の冷食メーカー「見方」が市販冷食市場へ本格参入した。9月から発売した冷凍ミールキット「シェフナビ」はフライパンで素材とソースを絡めて温めるだけで、まるでシェフが隣でナビゲートしてくれたかのようなひと皿が完成する。初年度は1万5000パック、5年後に10倍の販売数を目指す。

エア・ウォーターグループの同社は、和洋中の幅広い料理やスイーツ、おせちまで手掛ける冷凍食品メーカー。専用ラインを持たずに各部門の選任シェフ20人が、ホテルを中心に得意先のニーズに合わせたレシピで手作りする製品に定評を持つ。

だが、ホテル業界が新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受ける中、同社も3月中旬から厳しい環境に置かれている。「コロナ収束、ホテル業界の回復をただ待ってはいられない」(青山昇平社長)と、おうちごはんでニーズの高まる市販用冷食への参入を決意し、半年足らずで「シェフナビ」を完成させた。

本格的な味を出すのが難しい「ビーフシチュー」も家庭で楽しめる

同シリーズは定番料理だが意外に家で作らない「黒酢酢豚」や本格的な味を出すのが難しい「ビーフシチュー」、身をさばくところから手掛ける「ぶりの煮付」のほか、「豚の角煮」「ポークポトフ」「八宝菜」と和食、洋食、中華の王道をラインアップ。いずれも解凍後、10分以内で食卓へ提供できる。

完全調理品ではなくミールキットにしたのは、野菜のシャキシャキ感など素材の食感を残すためと、ターゲットの働く女性が帰宅後にひと手間を掛けることで「明らかな味の違い」を一口食べてより実感してほしいと願うもの。

無着色、無添加、中国産原料不使用で、1袋2食分の参考価格は税抜き980円。現在は北海道内の量販店のみで展開するが、今後はエリアと販路を広げ、同シリーズ第2弾や新たな市販用ブランドの開発も進める。

ホテル品質をうたう同社は味の良さとともに、開発力に自信を持つ。毎週50レシピを新開発し、その中から選抜されたストックレシピはすでに数千種類を超え、「世の中で当社が作れないレシピはない」と胸を張る。今後は開発力を生かした新規事業の立ち上げも視野に入れている。

◇日本食糧新聞の2020年9月25日号の記事を転載しました。