「オレボ」とは、福井市を拠点に9店舗を展開する「オレボステーション」の愛称。コンビニエンスストアと惣菜弁当の複合店として福井市民から絶大な人気を誇り、中でも「1g1円・ランチバイキング」は全国から同業者が見学に来るほど脚光を浴びている。小川明彦社長は「お客さまが喜ぶこと、自分がお客さまの立場で望むこと」を第一に、地域に密着する「ダイニングコンビニ」を標榜。作りたてとライブ感を演出する店内調理・提供に努めている。

弁当容器にご飯を150g以上詰めるのがルール

ランチバイキングの料理は約30品。先に客は弁当容器を手に取って、ご飯(または麺飯類)を150g以上詰めるのがルールだ。好きに詰め合わせた後、レジに行って重さを量り、「1g1円」で会計する。バイキング料理は通常の量り売り惣菜と同じため、ご飯ルールを踏まえたとしても1g1円は買い得。採算が厳しいこともあるが、「コンビニエンスストアの“ついで買い”を含めトントンならよい」(小川社長)と割り切っている。

ランチバイキングの日販は約100食、客単価は500~600円。ディナーバイキング(1g1.2円)は約20食。他に、弁当類、おむすび、調理パンなども種類豊富。イートインスペースもあり、麺類や丼物の調理・提供も行っている。

コンビニエンスストアと合わせた平均日販は約61万円で業界トップクラス。その約65%を惣菜弁当を主とする日配品で占める。

作りたての店内調理、ライブ感の演出に注力

地場素材を主に使用し、無添加、家庭料理、作りたての店内調理が基本。とりわけライブ感の演出に注力している。レジ横にグリドルを設置してハンバーグを焼いたり、アイドルタイムにはおむすびのオーダーメードにも対応。新店では焼き魚をオープンキッチンで焼くなど、臨場感の訴求に努めている。

厨房スタッフはピーク時に6人。「厨房と専従を抱えるにはコスト的に大きな決断が必要だが、品質向上と適時提供には不可欠。なによりロス削減の利点が大きい」(小川社長)と言う。

温かい作りたては売れる!と確信

オレボを経営する(株)大津屋は1573年に造り酒屋で創業した酒販店の老舗。小川社長は大学卒業後に帰郷して家業を継いだが、酒販の環境は厳しく、1981年、コンビニエンスストア「オレンジBOX」を独自創業した。

5店舗に増えた89年、卸業者から仕入れる冷えた弁当の品質に疑問を持ち、自分で「焼きそば」と「牛丼」を作って売ったところ、思いもよらぬ大ヒット。焼きそばは麺だけ、牛丼はレトルトをかけただけの即席調理だったが、「温かい作りたては売れる!」と確信を持ち、徐々に品揃えを増やした。

94年、コンビニエンスストアと惣菜弁当の本格的な複合店「オレボキッチン」を出店。2011年、ランチバイキングを開始した。

オレボを「コンビニエンスストアと惣菜弁当の複合店」だけで表現するのは物足りない。多々ある類似店とは比較にならないほどの“重厚感”があるからだ。

小川社長は「複合の類似店が増えているのは時代の要請だと思います。ですが、コンビニエンスストアがメーンで惣菜弁当がサブ、またはその逆だったり、主従的な複合事例が多い」と語り、「当社は地域密着のコンビニエンスストアを独学で立ち上げ、惣菜弁当のノウハウも地道に研さんしてきました。いわば『主従』ではなく『主主』の複合店を築いたと自負してます」と説く。
「主主の重厚感」は地域密着を積み重ねてきた大きな成果といえよう。

◆会社概要
(株)大津屋
本社所在地=福井県福井市西木田1丁目20番17号
(株)大津屋=1573年(天正元年)造り酒屋として創業。堅調に歴史を刻んできたが、酒販事業が先細り、代を継いだ小川社長が事業転換を決意。大手CVS加盟を試みたが地理的理由で断られ一念発起。独学で地域密着の複合CVS「オレボステーション」を築き上げた。現在9店舗のほか惣菜の通販事業など多角的に展開。

◇日食外食レストラン新聞の2017年6月5日号の記事を転載しました。