野菜を肉で巻いて串焼きにする野菜巻き串を提供する串焼き酒場が増えているが、その多くは豚ばら肉で巻いているもの。これをさらに一歩進化させて、牛肉を使ってすき焼きスタイルで提供し、名物メニューとして支持を得ているのが東京・新宿の「肉焼屋はなれ」の「牛串すき焼き」だ。

熱々の割り下で煮付けて食べる

「牛串すき焼き」は、米国産ブラックアンガス牛のばら肉で春菊とエノキを巻いて串打ちしたものを、炭焼きした後に、割り下を張った1人用サイズの小鍋に入れて軽く煮付けたもの。串焼きとすき焼きの調理法をドッキングさせた斬新さがウケている。

牛串すき焼き 1,058円(税込み)

「もともとはごく普通のすき焼きを1人前の小鍋で提供していたのですが、すき焼き専門店のそれと比べて明らかに見劣りしてしまい、価値を打ち出すためにはオリジナリティーが必要と感じていました。そこで着目したのが肉で野菜を巻いた野菜巻き串のスタイルだったんです」と、羽牟雄樹総料理長は開発のきっかけを語る。

商品開発に当たって野菜巻き串を売る繁盛店をいくつか視察してみると、牛肉で春菊を巻いた「すき焼き串」を提供している店をいくつか発見。しかし、大半が串焼きしたものに割り下風味のタレを付けて提供していた。それを見た羽牟料理長は「すき焼き串をすき焼き鍋で提供する店はない。タレで食べるより、熱々の割り下で煮付けて食べた方が付加価値が高い」と考えたのだ。

カウンター席のみの客席からは炭焼きしている様子が見える。こうしたライブ感も牛串すき焼きの付加価値ポイントになっている

その思惑は見事に当たり、いまや注文率50%を誇る名物商品に成長。高い注文率を誇る要因について羽牟料理長は「2段階のインパクト」と説明する。一つ目は炭焼きしている時で、野菜を巻いた牛串を見た客の大半が興味を示すという。

締めにもなる優れもの

同店はキッチンを囲むカウンター席のみで構成され、どの席からも焼き場の様子を見ることができるため、この効果は大きい。二つ目のインパクトは、グツグツと煮立った小鍋に盛られているビジュアルで、これを見た客からの連鎖注文も少なくないという。

具を食べ終えた後は、ご飯を加えて締めのすき雑炊としても楽しめる。無料でサービスしていることから、大半の客が締めを注文するという

食べると、炭焼きした香ばしさと割り下の味の組み合わせが特徴的。串になっていることで、メインではなく酒のつまみとしてカジュアルに食べやすいところもポイントだ。牛串を食べ終えた後は、ご飯を無料で提供。卵でとじると、締めの一品にも変身する。こうしたプラスアルファも付加価値向上のポイントとなっている。

6.5坪と狭い規模ながら、黒毛和牛を使った炭火焼きステーキや肉寿司など高品質な肉料理が充実している

●店舗情報
「肉焼屋はなれ」
経営=ANCHOR GROUND
店舗所在地=東京都新宿区新宿3-6-3 ISビル1階
開業=2017年3月
坪数・席数=6.5坪・12席
営業時間=18時~翌5時。無休
平均客単価=3500円

◇外食レストラン新聞の2019年6月3日号の記事を転載しました。