『ぶり大根が15分でできてなんならお客さんにも出せる』という料理本のタイトルに惹かれてさわけんさんを訪ねました。さわけんさんといえば、科学的な研究と料理の懸け橋となっている方。調味料も、あるものを上手に活かして、忙しい主婦に負担をかけない料理を提案してくれています。さわけんさんの知識と技術を丸ごと自分のものにできる、貴重な本のお話を伺ってきました。

手がかからないけどおいしい

この本は、これまで僕がこだわってきたことを集約した本になっています。まず、フルオープンのつくり。料理の本こそ、ベターっと開いて閉じないつくりが必要ですよね。料理本でこのスタイルは初めてじゃないかな。ダイヤモンド社さんに頑張ってもらいました。

僕は年間2000を超える食品を実食比較しています。自分で「科学する料理研究家」と言っていますが、世の中には栄養成分を研究している人は多いのに、調理の研究者は多くはありません。だから僕は、さまざまな研究論文を読み込んで、それを料理に活かそうと考えています。科学的に説明した方が、聞くほうも理解しやすいですよね。

さらに、フランスでの修行や辻調理師専門学校で教えてきた経験から得た知識をベースにしているので、この本のすべてが、科学的にも技術的にも裏付けされた、「手がかからないけれどおいしい料理」ばかりです。料理の種類もフレンチあり、アジアンあり。世界中の料理がちりばめられています。

本の中には吹き出しもたくさん入れました。省いてはいけないものには「大事です」や「決め手」のマークを。なくてもいい材料には「なくていい」マークをつけています。料理の手順や素材選びで、補足したいところにも吹き出しで説明しているので、参考にしてください。初心者の方でも、絶対に上手につくっていただける自信があります。

カット野菜はドンドン使おう!なめたけは調味料としても使えます

野菜を料理するのに一番大変なのは、野菜を切ることですよね。だから、時間がなければ、すでに切ってあるカット野菜を使えばいいんです。カットした野菜は、少しは栄養成分が減っているでしょうが、それでも栄養は十分あります。身体に悪いわけでもない。自分ができないところを人がやってくれているだけだと考えればいいのです。

もうひとつ、難しいのが塩での味つけ。多すぎると辛くなるからと、ほとんどの方が心配しながら恐る恐る控えめに入れています。そうすると味が締まらない。そういう方はしょうゆで塩味をつけると失敗が少なくていいですよ。もっとオススメなのは、なめたけ。なめたけは味ができあがっています。入れすぎても失敗した味つけにはならないので、ぜひ試してみてください。

この本のレシピは、野菜炒めなどの場合、先に計量カップやスプーンで合わせ調味料をつくってから野菜と合わせて炒めるという方法を取っています。

あとは調味料ですね。いろいろな調味料がありますが、たくさん持っていればいいというものではありません。必要最小限にしておけば、応用も利きます。

世界中の料理に対応できる調味料が、ポン酢しょうゆ、なめたけ、焼きのりまたは味つけのり、さんしょう、七味唐辛子、香味ペースト、ナンプラー、トムヤムクンペースト、コチュジャン、カレー粉、オイスターソース、昆布茶。これにエキストラバージンオリーブオイルと白だし、塩辛があれば、すでにあなたは料理上手です。

好きな野菜は、キャベツとちぢみほうれん草

好きな野菜はキャベツとちぢみほうれん草ですね。キャベツは今の時期、芯がめちゃめちゃ甘いですよね。スライサーでお手軽にコールスローをつくるのならいま! ちぢみほうれん草も冬は特に甘い。最高においしいですね。

ふきのとうも外せませんね。パスタにふきのとうは最高ですよ。ペペロンチーニをつくって、最後に刻んだふきのとうをバーンと入れるんです。苦味があってすごくおいしいパスタができます。菜の花もいいですよね。そのまま食べてもおいしいし。

白ワインに合わせるなら、たらとじゃがいものニーム風なんてどうですか? 本でレシピを紹介していますが、材料はたら、にんにく、じゃがいも、チーズ、牛乳、以上です。

そうそう、トマト。僕は1年中スーパーを回ってさまざまな食材を研究していますが、イオンの野菜売り場にある完熟トマトは素晴らしいですね。普通、トマトは追熟させて赤くするのですが、イオンの完熟トマトはすでに熟していて、味もすごくいい。絶対にオススメですよ。

エリンギも面白い。切り方でいろいろな食感に変化します。縦に切ると牛肉で、横に切るとホタテになる。1cm厚さに切って焼いて、松茸味のお吸い物の素を混ぜると、松茸にもなります。

おいしい食材には、嫌味のない調味料を用意しておくといろいろと楽しめます。自分で頑張ってつくらなくてもいいんです。大手メーカーはとことん研究して多くの種類を出しているので、それを上手に利用するのが、ちゃんとしているけど手がかからない料理のコツですね。

●プロフィール
フランスの星付きレストランで修行後、辻調理師専門学校で11年間講師を務める。料理を科学的、理論的に分析し、誰にでも分かりやすく説明してくれる人気の料理研究家。フランス料理に限らず、イタリア、アメリカ、スペインなど世界各国の料理を研究し、講習回数は4,000回を超える。「科学する料理研究家」として発信するブログも人気。

『ぶり大根が15分でできてなんならお客さんにも出せる』
さわけん著/ダイヤモンド社刊
単行本(ソフトカバー):256ページ
発売日:2019年2月14日
定価:1,400円(税別)
(c)鈴木信吾

◇百菜元気新聞の2019年3月1日号の記事を転載しました。