日本人にとって、韓国料理と、ヨーロッパの食文化との関わりが深いチーズとの組み合わせは、一見、不似合いな印象がある。ところが、昨今、本場ソウルでは韓国料理×チーズのコラボメニューが評判だ。その人気はコリアンタウン・新大久保にも上陸。昨年10月にオープンした「Oh!キッチンN」が提供する、とろけるチーズを滝のようにかける「ラクレット低温熟成サムギョプサル」が話題のメニューになっている。

目の前でとろとろのチーズをかけるパフォーマンス

「サムギョプサル」といえば、韓国料理店の定番中の定番メニュー。どこの店でも食べられ、メニューとしてはやや新鮮さに欠ける。それを一躍、人気メニューに押し上げたのがチーズとの組み合わせだ。

だが、「チーズハンバーグ」のように、チーズを肉の上にのせただけではインパクトが足りない。そこで考案されたのが、客の目の前で、とろとろのチーズをかけるというパフォーマンスだ。ベースになっているのは、「ラクレット」というチーズ料理。チーズの表面を熱で溶かして、溶けた部分をナイフなどで削って食材にかけて食べるスイス料理だ。

ちなみに、新大久保の韓国料理店でチーズを使っている店は少なくないが、ラクレットを採用しているのは同店のみ。

肉のうま味を損なわないゴーダチーズを使用

提供の仕方のポイントは、サムギョプサルの出来上がりと、ラクレットオーブンにセットしたチーズが溶けるタイミングを合わせること。注文ごとに1回分のチーズを溶かし、客の目の前で、とろとろに溶けたチーズをかける。1皿(2人分)に使用するチーズは200gが目安だ。「写真を撮ってSNSにアップされるお客さまも多いので、このパフォーマンスをお目当てにご来店なさる方も少なくありません」と金泰林店長。

使用するチーズはゴーダチーズ。「脂肪分の多い豚ばら肉の味に合い、肉のうま味を損なわないチーズを見つけるのが、メニュー開発で一番苦心した点です」

低温真空調理で軟らかく仕上がった肉

肉の仕込みにも工夫が凝らされている。通常、サムギョプサルはスライスした生肉を鉄板で焼くことが多いが、「Oh!キッチンN」では、ブロックの豚ばら肉を醤油ベースのたれに漬け込んで真空パックし、70℃のお湯に24時間漬けて加熱。食べやすい大きさにカットし、オーブンで焦げ目を付けてから提供する。

低温真空調理で軟らかく仕上がった肉が、焼くことで香ばしくなる。これだけでも十分、付加価値のあるサムギョプサルをラクレットチーズとコラボさせることで、他店にはないスペシャルメニューが誕生したというわけだ。

●店舗情報
「Oh!キッチンN」 店舗所在地=東京都新宿区百人町2-3-20 1階/開業=2016年10月/営業時間=午前11時~翌午前0時 無休/坪数・席数=約18坪・約40席/1日平均客数=平日約100人、土・日・祝日約150~180人/平均客単価=昼1500円、夜2500~3000円

◇日食外食レストラン新聞の2017年3月6日号の記事を転載しました。