居酒屋が全般的に低迷している中、来客数を3割増にしている店がある。ワタミが展開する「ミライザカ」だ。「未来の居酒屋」をイメージし、「唐揚げNEO総合居酒屋」をコンセプトに、看板メニューとして開発されたのが「モモ一本グローブ揚げ」。定番メニューの唐揚げといえども、ここまで訴求力を発揮できることを実証するメニューだ。

揚げたときの仕上がりをグローブ状に

「ミライザカ」が目指しているのは、総合居酒屋としてのメニュー数をある程度保ちつつ、“食べるべき一品”の看板メニューがある店。客の目的型来店に弾みを付けるというミッションの下に開発されたのが、「モモ一本グローブ揚げ」だ。

「いまさら、唐揚げ?」と思う感もあるが、「運動会のお弁当や誕生日会など、ハレの日に必ずといっていいほど登場するのが唐揚げです。万民に愛されている食べ物ですね」と唐揚げの強さを語るのは商品企画部の麻生鎮之氏。家庭料理でも、外食でも食べる機会があるからこそ、“他にはない”何かが鍵となる。

「モモ一本グローブ揚げ」のそれは、グローブに見立てたユニークな形だ。もも肉を丸ごと揚げるだけではボリューム感はあっても、見た目の特徴にはやや欠ける。そこで思いついたのが、骨に対して垂直方向に数ヵ所、切り込みを入れることで、揚げたときの仕上がりをグローブ状にするというアイデアだ。

肉厚の骨付きもも肉に火が通りやすくなるという利点も

「どこにどう切り込みを入れたら、グローブ状になるか、いろいろ試しました」と麻生氏。また切り込みを入れることで、肉厚の骨付きもも肉に火が通りやすくなるという利点もある。

客席に運ばれた「モモ一本グローブ揚げ」は、そのメニュー名を裏切らない見た目で、客にシャッターを切らせる。「今の時代、思わず写真を撮りたくなるような“絵力”があることが、メニューの必須条件です。SNSの宣伝力は大きいですから」。

またスタッフが客の目の前で、骨から身をカットするというパフォーマンスもプラスされている。予想以上の評判となり、「ミライザカ」のオープン当初には、食材の「岩手みちのく清流若どり」の調達に奔走するといううれしい悲鳴も。

「モモ一本グローブ揚げ」は、定番メニューに付加価値を付けてブラッシュアップすることが、開発にかかる手間や時間はもちろん、食材の調達やオぺレーションなどあらゆる点で効率的であり、成功への近道であることを裏付けるメニューといえるだろう。

●店舗情報
「ミライザカ 中目黒店」 所在地=東京都目黒区上目黒3-8-5 中目黒サンライズビル2階/開業=2016年6月/営業時間=午後5時~翌午前3時、金は翌午前5時まで、日・祝は翌午前0時まで、無休/坪数・席数=97坪・192席/1日平均客数=平日約100人、金土約180人/平均客単価=2800円

◇外食レストラン新聞の2017年4月3日号の記事を転載しました。