皆さん、鶏肉はお好きですか? お肉の中では比較的お財布に優しいため、お給料日前のお宅では“食卓の救世主”的存在。ささみや皮を剝いだ胸肉などは、「ヘルシー」としてダイエットの強い味方とも位置づけられています。そんな日本の食卓に欠かせない鶏肉は、全国各地でその土地独特の食べられ方をしている食材でもあるんです! 「たべぷろ」では「ニッポンの食べ方」と銘打ち、これまでもさまざまな鶏肉料理をご紹介してきました。
10月29日は日本食鳥協会が制定した「国産とり肉の日」。今回は全国各地に散らばるたべぷろ編集部員たちから寄せられた“マル秘情報”をもとに、「ニッポン全国鶏肉の食し方」をご紹介していきます!

<比内地鶏>秋田名物きりたんぽ鍋と相性抜群

きりたんぽ鍋。その場で火にかけてくれます

秋田の名物「きりたんぽ」。実は、日本を代表する三大地鶏の一つとされる秋田の比内地鶏と深い関係があるということをご存知でしょうか?

きりたんぽを使ったきりたんぽ鍋は「きりたんぽを入れればOK」ではなく、他にもいくつかの定番があります。その中でも外せないのが、比内地鶏の 「だし」です。

実際は比内地鶏よりきりたんぽの歴史の方が長く、比内地鶏との組み合わせが誕生したのは「偶然、相性が良かったから」なのだとか。だしのうまみを生かすため、きりたんぽ鍋にはセリ、ネギ、ゴボウ、キノコといった水分の少ない野菜を入れます。肉も比内地鶏がベストですね。

今回は「秋田比内地鶏や」 にお邪魔してきました。きりたんぽ鍋(1700円税込)は、ここの人気メニューの一つです。

きりたんぽ鍋の味を一言で表すなら「飽きのこない美味しさ」です。比内地鶏のだしを吸ったきりたんぽの味わいは絶品で、かむと口の中にスープのうまみが広がります。こちらの鍋には、肉とモツが入っています。

この店舗では、他にも親子丼や焼き鳥など、いろいろな比内地鶏を活かしたメニューが食べられますよ。

<名古屋コーチン>ぜいたくな“親子丼”に

愛知県の特産品であり、日本三大地鶏の一つともされる名古屋コーチン。正式な品種名は「名古屋種」ですが、古くから「名古屋コーチン」の名前で親しまれて、今もその名で呼ばれています。肉質は弾力があり、よく締まって、鶏卵は濃厚でなめらかなコクがあります。そんな名古屋コーチンのもも肉と卵を使った親子丼は格別です!

今回は鶏肉の老舗「鶏三和・尾張さんわ屋」で、もも肉と卵を購入しました。もも肉1枚約1000円、卵6個で約500円です。通常の鶏肉と比べると価格は高くなりますが、お値段相応の美味しさがぎゅっとつまっています。弾力のある肉は親子丼と相性が良く、お店の方にお聞きしたところ、名古屋コーチンで親子丼を作る方は多いとか。実際作ってみると納得の美味しさです。

臭みがなく、肉の旨味だけがしっかりとわかる味わい。硬すぎることも軟らかすぎることもない、程良い弾力。肉には出汁が染み込み、噛むほどに口内に香ばしさと旨味が広がります。

名古屋コーチンの卵も親子丼にぴったりです。まろやかで濃厚、そしてコクがある奥深い味わいは、半熟状態でその真価を発揮します。そんなとろりとした卵とお肉をほかほかご飯と一緒に食べる親子丼は、絶品の一言。ぜひ一度、この贅沢な親子丼をお試しください!

<骨付き鶏>まるで“マンガ肉”!そのままカブリツク香川県名物

漫画やアニメなどで見たことありませんか? 登場人物が骨付きのお肉にかぶりつく姿。実は、香川県の名物料理「骨付き鶏」で、それを実現できてしまうのです!

香川県丸亀市が発祥といわれている「骨付き鶏」。表面の皮はパリパリで、中はジューシー。スパイスが効いて、お酒にもご飯にも相性バッチリな骨付き鶏は、ご年配の方から幼い子どもまで大人気のメニューです。

週末ともなれば、骨付き鶏を提供しているお店は多くのお客さんで賑わいます。かぶりつくと肉汁が口いっぱいに広がり、一度食べたらやみつきになること間違いなしです。

骨がついたままの鶏肉にスパイスをまぶして、オーブンでじっくりと焼き上げる。シンプルな調理方法でありながら、その味はとても奥深いものとなっています。

もし、香川県に立ち寄ることがあれば、是非とも骨付き鶏の魅力を味わってください。そして、幼い頃にあこがれた骨付きのお肉にかぶりつく感覚も味わってください。

<薩摩地鶏>生の鶏肉を甘めの醤油でどうぞ!鹿児島県の郷土料理「鳥刺し」

鹿児島県の鳥料理「地鶏の刺身」。季節を問わず、県民から愛されている料理です。

日本三大地鶏の一つとされる「薩摩地鶏」の刺身は、観光客をターゲットした郷土料理店で扱われるのはもちろん、スーパーでも販売されています。「鳥刺し」とも呼ばれます。

今回は鶏料理店に行き、モモ肉とムネ肉の2種類を購入。150g430円という販売価格でした。

地鶏の刺身はその名の通り、スライスした鶏肉を生で食べる料理です。食べ方としては、魚のお刺身と同じくさしみ醤油で頂くのがメジャー。鹿児島のさしみ醤油は甘いことで知られていますが、この甘い醤油が地鶏の刺身にもよく合います。

一口頬張ると、コリコリとした皮の歯ごたえ、プリっとした鶏肉のハーモニーが口の中で広がります。この皮と肉の食感の対比が、たまりません。モモ肉は鶏肉が持つジューシーさを堪能できるのに対し、ムネ肉はあっさりとした味わいが楽しめます。

「地鶏の刺身はさしみ醤油で食べる」と紹介しましたが、お好みで薬味を加えてもgood! 今回は薬味としてショウガ、わさび、にんにくを用意し、鶏料理店で販売されていたタレも準備しました。中には、ごま油、大葉、塩などの薬味で頂く人もいるのだとか……。

地鶏の刺身は刺身ですので、買ってきたその日のうちに食べきりたいお料理です。ご縁があったらぜひ、食べてみてくださいね。

<ザンギ>から揚げとはひと味違う?!北海道の名物

北海道特有の鶏料理として、真っ先に頭に浮かぶ「ザンギ」。ザンギは、鶏肉に衣をつけて油で揚げた料理ですが、「それってから揚げじゃない?」と思われたアナタは正しい! ザンギとから揚げの違い…。それは21世紀になっても解明されない北海道の謎なのだとか。

ザンギは、釧路市にある「鳥松」というお店が発祥らしく、中国語で鶏のから揚げを意味する「ザージー(炸鶏)」に運がつくように「ザー運ジー(ザンギ)」となったようです。

北海道のソウルフード「ザンギ」は、居酒屋メニューとしてはもちろん、スーパーの総菜コーナーでも買うことができます。家庭では、「今日のおかずはから揚げだよ」はあっても、「今日のおかずはザンギだよ」という会話は聞かれません。

おかずになるのが「から揚げ」で、ビールのつまみになるのが「ザンギ」。またはから揚げが津軽海峡を渡った時点で「ザンギと呼ばれる」など、ゆるーく考えてください。

種類としては、小麦粉と片栗粉、タマゴを使って下味は濃すぎず薄すぎず-のどこから見ても普通の「から揚げ」的存在である「ベーシックなザンギ」、「味が濃いのがザンギ」としてザンギとから揚げを明確に分けたい人が推す、下味にニンニクと生姜を加えて濃厚な味に仕上げた「王道のザンギ」などがあります。

<鉄板焼鳥>鳥皮がカリッと…今治の名物

愛媛の今治で生まれたといわれる「鉄板焼鳥」。串に刺して焼いたものを食べるのが通常の焼鳥ですが、今治では鉄板で焼いたものを皿に盛り付けて食べる鉄板焼鳥と呼ばれる料理が存在します。今治で焼鳥というと、鉄板焼鳥の方が一般的。焼いた鳥皮を甘いタレで食します。

今治で鉄板焼鳥が生まれた理由は、戦後に造船業が発達したためといわれています。造船業のほかタオル工場も多く、仕事でつなぎや作業着を着ている人が多かったようです。仕事で衣類が汚れるため、仕事後に飲食店へ入りづらい人たち向けに登場したのが鉄板焼鳥。戦後は今治に焼鳥文化が根付いていなかったため、鉄板焼鳥が流行したようです。

鉄板焼鳥は、鉄板に鳥皮や鶏肉を並べた後、プレスと呼ばれる持ち手付きの鉄板で上からぎゅうと押さえて焼きます。今治の人は「せっかちで待つのが嫌い」といわれていて、手早く料理を出すためにプレスで押さえ付けて焼くのだとか。プレスを使わなくても、コテなどで押さえて焼くのが一般的で、通常の焼鳥店よりも出てくるのが早い印象があります。

甘いタレで味付けされ、さらに目玉焼きが載るのが特徴です。カリカリに焼かれた鳥皮とタレは相性バッチリで、仕事終わりのビールのお供にはうってつけの味。一緒に付いてくる目玉焼きの黄身と混ぜると、味が変わって食が進みます。

<美唄焼き鳥>鳥のすべてが串に収まる!

北海道の美唄市にも個性的な焼き鳥があります。通常焼き鳥といえば、1本の串に1種類の肉や内臓が刺さっていますが、「美唄焼き鳥」は砂肝、レバー、心臓、キンカン、皮など、様々な部位が1本に収まっているのが特徴です。

串の動きを留めやすくするため、串元には皮、鶏のうまみを一番感じられるモモ肉を最後に刺すという決まりがあるようですが、その他の組み合わせは自由。どのようなバリエーションになるかは、運ばれてくるまでわからない楽しさもあります。

「美唄焼き鳥」の誕生は、美唄市の産業的な歴史と「もったいない」精神に関係しているとか。その昔、焼き鳥店では、精肉を取った後の鳥のモツや皮を捨てていました。昭和30年代に美唄市内で飲食店「三船」を経営していた三船福太郎氏が、「鳥を無駄にせずに使えないか?」と考案したのが「美唄焼き鳥」のルーツといわれています。

当時の美唄は炭鉱景気で沸いていました。夜の街も景気良く、体力を使う炭鉱マンたちにモツを1本にまとめた焼き鳥は大好評。「美唄焼き鳥」の名は、時間をかけて全道・全国に広がっていったのです。味付けは塩オンリー! 串から外さず、鳥を丸ごと味わうように、そのままかぶりついてください。