愛媛県松山市在住のたべぷろ編集部員・藤田竜一です。生まれてこの方20年以上を愛媛で過ごし、現在は松山に移り住んで10年になります。今回は10月9日の「鯛の日」にちなみ、愛媛を代表する食材である鯛の歴史や家庭でも簡単にできる郷土料理「ひゅうが飯」をご紹介しましょう。

鯛の生産量日本一の愛媛県はその歴史も深い!

愛媛県は瀬戸内海に面していることもあり、昔から魚を使った料理を生活の中に取り入れていました。代表的な食材としては「じゃこ天」があり、練り物系の食べ物として独自の食文化を形成しているのがわかります。

じゃこ天以外にもハマチやブリなど愛媛県では様々な魚が獲れますが、その中でも全国的に知られているのが鯛です。愛媛県の鯛の漁獲高は1990年から2016年まで常にトップとなっており、全国の年間生産量約7万トンのうち約4万トンは愛媛県産です。

愛媛県は近世の時代から鯛を獲る場所として知られており、とくに今治や上島町付近は漁場とされていました。これら愛媛県で取れた鯛は塩辛などに加工され、幕府への献上品として重宝されていたほどです。

同時に、近世後期では武士以外の人たちも鯛を「ぜいたく品」として食すようになってきました。鯛に昔から触れていた愛媛県では、この鯛を酒にひたして干した「伊予干焼鯛」などを作り、この料理は「鯛百珍」という書物にも記録されています。

しかし、近代に入ると鯛の漁獲高に陰りが見えてきます。昭和に入ると回遊魚も数が減ってしまい、愛媛県の漁業全体に打撃を与えました。そこで、愛媛県では養殖によって鯛を生産する方法に力を入れていきます。

昭和40年代から愛媛県全体で養殖鯛の生産に力を入れ始め、今では養殖漁業者と愛媛県漁連が共同でプロジェクトを推進し、全国に発信できるレベルのブランド品「愛鯛」へと昇華させました。

えひめの鯛/鯛日本一の秘密(えひめ愛フード推進機構)

郷土料理・鯛料理を扱う店も充実

愛媛では祝い事の際に鯛が出されるだけでなく、漁師たちの間で食されたりしたメニューが郷土料理として多く残っています。その1つとして有名なのが鯛飯で、こちらは愛媛の中心街である松山の老舗店でも多く振る舞われています。

鯛を使った料理はそれ以外にも存在しており、ちょっと変わった郷土料理として残っているのが「ひゅうが飯」です。ひゅうが飯は愛媛県南予地区の沿岸部地域に残る郷土料理。

鯛の刺身をご飯に乗せ、南予地域ではお馴染みのしょうゆベースの甘めの出汁にひたして食します。魚の刺身以外にもみょうがやわけぎなどの薬味も乗せ、かき込むように食べるのがひゅうが飯の流儀です。

また、愛媛県らしく夏ミカンの皮を乗せて食べる人もいます。鯛以外にもアジなど庶民的な魚を乗せて食べる習慣も存在しており、魚と共に生きてきた愛媛県らしい食べ物です。

ひゅうが飯だけでなく、愛媛県には「鯛さつま」と呼ばれる郷土料理も残っています。この「鯛さつま」の名前には諸説ありますが、薩摩藩にある「さつま汁」から着想を得てこの郷土料理が生まれたと一説では言われています。

鯛さつまもひゅうが飯と同じく非常にシンプルで、麦みそとすり合わせた鯛の身をご飯にかけて食べます。

鯛のお刺身をアレンジしてちょっと贅沢な「ひゅうが飯」

非常にシンプルな鯛料理が残る愛媛県。鯛は日常生活で頻繁に食べないでしょうが、スーパーなどで売ってある鯛の切り身があればちょっと贅沢なひゅうが飯をすぐに堪能できます。

<材料>
鯛の刺身
ご飯
料理酒
みりん
醤油
砂糖
お湯(鶏がらスープでも可)
お好みでネギや柚の皮、ごま、ノリなどをご用意ください。

<作り方>

  1. 水大さじ3と料理酒大さじ4を鍋に入れてから沸かし、そこにみりん大さじ1、砂糖大さじ1、醤油大さじ2を入れていきましょう。
  2. 作った出汁を冷やし、買っておいた刺身を浸して2時間ほど付け込ませておきます。
  3. しっかりお刺身に味がしみこんだのを見計らい、タレとお刺身をご飯に乗せていきます。
  4. お好みの薬味を入れれば完成です。

甘さに関しては個人差が大きいと思いますので、抵抗がある人は少なめにしてもいいでしょう。反対に、甘い出汁を楽しみたい人は大さじ2でも大丈夫です。

また、卵かけご飯が大丈夫な人は、こちらのご飯に卵を入れて召し上がるのもおすすめ。

 

今回は愛媛県に残る鯛の歴史や郷土料理について紹介してきました。普段の料理にちょっと味気なさを感じているとき、ちょっと鯛のお刺身を添えるだけで華々しさと新しい触感を楽しむことができます。作り方は非常に簡単なので、ぜひご自宅でも試していただければと思います。