<相談>
先生、こんにちは。最近、82歳の祖母の食欲がなくなり、介護している母が毎日の献立にすごく悩んでいます。噛んだり、飲み込むことが難しくなってきているようで、柔らかい食材を選んだり、小さく刻んだりと工夫をしていますが、なかなか箸が進まず、母はワンパターンな献立になりがちだからだと落ち込んでいます。このままでは、祖母は体力がなくなり、母は料理が苦痛になってしまって、二人もと食べることが嫌いになってしまうのではと心配です。
母の手間がかからず、祖母が美味しくご飯を食べてくれるような献立作りを教えてください。料理を作る母とご飯を食べる祖母の笑顔がみたいです!(会社員K さん40歳 母65歳 祖母82歳)

<回答>食欲は五感から。野菜の彩りをふんだんに使って、眼で美味しい料理を心がけましょう

みなさん、こんにちは。「食べプロ相談室」回答者の管理栄養士・大山加奈惠です。

食欲は五感からとも言われます。特に高齢者になると視力が落ちているので、色の違いがはっきり認識できなくなっています。野菜などを使って赤、緑、黄色、白を取り入れた料理を綺麗に盛りつけてください。

にんじん、トマトなどの赤、葉物野菜の緑などはっきりした色を少し添えるだけで、料理が華やかにみえます。噛むことが難しい人には生の野菜ではなく、茹でたりミキサーにかけて使用します。

野菜を一口大に切り、だし汁やスープで煮込んでから、そのまま小分けパックに入れて冷凍保存すると、味が薄くついているし、使いたい分だけ解凍できるので便利です。

マッシュポテトややわらかい大豆の煮物などを大量に作って保存しておき、足りない時の一品や味付けを変えたり、コロッケや混ぜご飯などにアレンジすると調理時間も短縮されます。ハンバーグや餃子などメイン料理も多めに作って冷蔵庫の常備食材にしておくなどして、うまく使いまわしていきましょう。

ほうれん草をだし汁と一緒にミキサーにかけると、緑のソースに

冷凍食品や缶詰を使って、手間を減らす。手抜きじゃなく、毎日の料理を楽しむ手段と思って

お母様のように介護をしている人は、手間暇かけて作った料理を食べてくれないのが気になり、料理をする気持ちが失せてしまいがちです。しっかり作らなければいけないと気負いすぎると、毎日行う調理だからこそお母様の負担になってしまいます。

時間がないときはコンビニで売っている調理済み食品(お惣菜、唐揚げ、ハンバーグ、カレー、麺類など)を介護食に使うこともできます。味が濃いめなので塩分制限がある場合は食べる量を控えたり、使う量を減らし野菜やご飯を加えてボリュームを増やしてください。1食分のカロリーや塩分はラベルに記載してあるので、確認してから使ってくださいね。

冷凍の唐揚げは使う前にボールに入れた水に10分程度漬けておきます。衣が硬い部分があるので、漬け込むことで柔らかくなり、食べやすくなります。その後は切れ目を入れたり、刻んだりと、食事の形態に合わせて調理してくださいね。

冷凍唐揚を水につけると、柔らかい&薄味のダブル効果

缶詰もそのまま使える物が多いので、調理時間の短縮になります。中でもクリームコーンは使いやすくて、おすすめです。ポイントは、一度ざるにあげて、コーンの皮を取り除くことです。飲み込むことが難しくなった人には、皮が喉につかえることもあります。

処理したクリームコーンを製氷器に入れて、凍らせておけば、いつでも使えますね。スープやソースとしてお肉にかけたり、サラダに混ぜてみたりとバリエーションも色々使えますよ。

皮を取り除いたクリームコーンで作ったコーン卵スープ。喉越しまろやか

美味しい介護食品もぞくぞく登場。食欲がないときは、積極的に利用して栄養補給しましょう

介護食品も美味しさ、食感、見た目の質がよくなっています。レトルトパックなどの常温保存が可能な食材や冷凍食品は、長期保存ができるので使いたいときに使えて便利です。忙しい時や献立にもう一品ほしいときに使えるお助けアイテムに便利ですね。

食事の量が少ない低栄養の方には、たんぱく質、脂質、糖質、ミネラル、ビタミン、食物繊維が入ったゼリーや飲料など濃厚流動食がおすすめです。少量でエネルギーや栄養をバランス良く摂取できます。

主食やおかずなどをやわらかくした食品も酵素を使って栄養素を消化・吸収しやすくしているので、見た目は普通の料理と変わりません。鯖の味噌煮、クリームシチュー、酢豚など、和洋食のバリエーションも豊富で味にも飽きさせずに献立作りができますね。

介護食品はカロリーや塩分、栄養バランスを計算して作ってあるので、栄養管理がしやすいのも利用するメリットです。

また介護食品のデザートは普通のお菓子と違い、たんぱく質や食物繊維が強化されているので、栄養が足りない時の補食にもなります。ドリンクや料理に使えるプロテインパウダーや、不足しがちなカルシウム、鉄、亜鉛、乳酸菌、食物繊維の補助食品もありますので利用してみてください。

介護をしながら毎日料理を作るポイントは、無理せず、手間をかけずに楽しみながらを心がけることです。年をとってどんな状況になっても、食を楽しみ笑顔で過ごす。それが超高齢化社会を元気に過ごす、食べるコツですね!

「食べプロ相談室」では、食べ方に関する悩みに専門家がお答えします!

たべぷろの専門家ライターが、あなたの「食べ方」に関する悩みにお答えします。
お問い合わせフォームに必要事項と相談内容をご記入ください。