「プラントベース食」とは、動物性食材を取らない食生活のこと。池田清子さんは、プロの長距離マウンテンバイクライダーのご主人と共に、この食生活を実践しています。プラントベースを始めたきっかけ、冬野菜のおいしい食べ方や栄養素を上手に取り入れる調理法を伺いました。

夫のチームメイトがきっかけで「プラントベース食」をスタート

動物性の食べ物を取らない食生活「プラントベース」に出会ったのは8年前。夫はプロの長距離マウンテンバイクライダーなのですが、当時、プロ生活も長くなり伸び悩んでいました。そんな中、米国チームメイトの女性選手がプラントベースを始めたのです。彼女は、ずっと減量に苦労していたのですが、プラントベースに切り替えたことで身体はスッキリし、数カ月後の世界大会ではチャンピオンにもなりました。

プラントベース・アスリートフード研究家の池田清子さん

彼女にすすめられたこともあり、夫も「プラントベースをやってみたい」と。私はマクロビオティックの資格を持っていて、野菜だけで食事をつくることを得意としていたので二つ返事で引き受け、一緒にやってみることにしたんです。半年ほど続けると、成績は上がっていき、さらに驚いたのは夫の身体の変化です。むくみがなくなり、悩まされていた喘息や花粉症の症状も出なくなりました。高かった血圧も正常値に。私自身も、身体の不調がなくなったことを実感しました。

プラントベースは、肉や魚、乳製品、卵はとらず、植物性食品だけを食べるので、その点はヴィーガンと共通です。ただ、それだけではなく、野菜をたくさん食べることもコンセプトにしています。そのため、健康目的で始める人もいますし、3食のうち1食だけ、または週末だけ取り入れている方もいます。プラントベースを意識した食事の方法は、できる範囲で、人それぞれでいいのかなと。1食をプラントベースにするだけでも、血液の状態が変わることは証明されていますし、続けることで、私たち夫婦のように身体の調子がよくなることが実感できるのではないかと思います。

肌が荒れた時に意識して取るのはビタミンCとアミノ酸豊富な小松菜

白菜、にんじん、ごぼう…冬野菜は、甘みを含んでいるものが多いですよね。そのため、おいしく調理するには、いきなり強火にかけず、弱火で少しずつ火を加えたり、じっくりコトコト煮込むのがポイント。そうすれば、より甘みを引き出すことができるんです。

ごぼうの皮をピーラーで全部むいていませんか? ごぼうは、皮に近いほど香りやうま味があるので、皮をむきすぎないことが大事。私は、小ぶりで毛が短い亀の子タワシを使って軽くこするようにしています。

好みの野菜でつくる「ローズマリー風味のごろごろ焼き」

きんぴらをつくる時は、太い茎の部分がオススメです。その際、火にかけてから混ぜすぎてしまうと、ごぼうに含まれている水分が飛んでしまうので、なるべく箸を入れないように。弱火でゆっくり加熱していくと、最初はツンとしたごぼうの香りがだんだんと甘い香りに変わり、うま味も閉じ込められます。

1年を通して手に入りますが、小松菜も冬が旬。生で食べると、シャキシャキした歯ごたえや濃厚な香りが楽しめます。とくに私が意識して取るのは、風邪の引き始めや肌が荒れた時。小松菜にはビタミンCや鉄分だけでなく、プロリンというコラーゲン生成につながるアミノ酸も豊富だからです。

にんじんに多く含まれているのがβ-カロテン。体内に入るとビタミンAに変わり、粘膜や肌を守ってくれます。残念ながら、生で取っても9割以上は排出されてしまいます。ところが、油と一緒に加熱して取ると、吸収率は7割前後までアップするんです。にんじんもごぼうと同様に皮の近くに栄養素が集まっているので、皮はむかずに使っています。私はいつも「小松菜とにんじんは、肌の美容液」だと思って食べています(笑)。

「白菜と酒粕のさっと煮」
「白菜と酒粕のさっと煮」。白菜は塩気のあるものと合わせるのがコツ

たんぱく質が豊富なブロッコリー 茎も甘くておいしい逸品に

野菜には、たんぱく質は含まれていないと思っている方も多いのでは? 実は野菜も少なからずたんぱく質を含んでいますし、野菜や豆などを組み合わせることで、満足できるだけの量を取ることもできるんです。

中でも、たんぱく質が多いのはブロッコリー。100kcalあたり13gほど含まれています。この数字は、高たんぱくで知られる鶏むね肉を上回っています。オススメの食べ方は「ブロッコリーのお刺身」。茎の部分を捨ててしまう方もいると思ったので、あえてフォーカスしました。ブロッコリーの茎は、断面を見ると内側に白い点線があるので、その部分まで皮を切り落としましょう。また、やわらかくなるまでしっかりゆでることで、お刺身のような食感が楽しめます。

「ブロッコリーのお刺身」
「ブロッコリーのお刺身」は、わさびしょうゆや酢みそでどうぞ

野菜はとてもおいしく、多様な食べ物です。味がはっきりしないと感じてしまうのは、濃い味に慣れすぎていたり、野菜のおいしさを引き出す調理法が知られていないからだと思います。野菜の味や食感は千差万別。掛け合わせを少し工夫するだけでも、うま味はぐっと引き立ちます。著書では野菜の活かし方やおいしさを引き出すレシピをお伝えしているので、活用しながらレパートリーを増やしていただきたいですね。

野菜が主役のものを食べ続けていると、味や香りの変化、季節によって風味が異なることにも気づけるようになっていきます。ちなみに夫は、野菜に含まれているナトリウムの味を感じられるようになったとか(笑)。私自身は、野菜を食べた後、水分が身体の中を巡っているように感じています。野菜の魅力を舌で味わい、身体で体感すれば、どんどん好きになっていくと思います。

〈プロフィル〉
いけだ・さやこ プラントベース・アスリートフード研究家、ビオトープ株式会社代表。菜食を主とした「健康的に強く美しくなる」食事の研究と発信をメディアで行う。2014年より自身もランニング・筋トレを中心とした運動をスタートし、国内外で大会出場経験も多数。夫は7年連続日本代表マウンテンバイクプロライダーの池田祐樹。

『野菜のおいしい食べ方』

『野菜のおいしい食べ方』
池田清子著/日東書院本社
定価:1540円(税込)

◇百菜元気新聞の2023年1月1日号の記事を転載しました。