愛媛県松山市在住のたべぷろ編集部員・藤田竜一です。生まれてこの方20年以上を愛媛で過ごし、現在は松山に移り住んで10年。愛媛の中でも繁華街のある松山でさまざまなものを食し、愛媛ならではの食べ物にも触れてきました。今回は愛媛の食べ物なのに不思議な名前の「伊予さつま汁」のルーツと食し方についてご紹介していきましょう。

愛媛なのに薩摩?瀬戸内海に面する地域で生まれた「伊予さつま汁」

愛媛県南予地区は愛媛県でも港町が栄えている場所の1つです。特に宇和島の漁獲高は県内でもトップクラスで、「じゃこ天」をはじめ魚を使った料理が多く残っています。その中でも少し変わっているのが「伊予さつま汁」です。

「さつま汁」といえば名前にある通り九州の鹿児島県に伝わる料理です。鹿児島県でさつま汁といえば鶏肉や大根、人参などをごった煮にしたものを指します。他にも各地域によって入れるものなどが変わってくるようで、味付けにもそれぞれの地域差があると言われています。

しかし、愛媛県南予地域を中心に伝わる伊予さつま汁は魚と味噌を用い、さらにそれをご飯にかける冷や汁のようなものとなっています。各地域にも冷や汁文化は残っていますが、愛媛県ではこの伊予さつま汁がそれに当たります。また、冷や汁なのに「さつま」という名前が入っているのには諸説があると言われています。

1つ目が、昔に鹿児島県から伝わったさつま汁が愛媛県なりの形になって土着した説。

2つ目は、「妻が夫を助ける」という意味を当て字にして「佐妻汁(さつまじる)と付けられたという説。

そして3つ目が、だし汁がなじみやすいようにご飯に十字を入れるところが、薩摩藩の藩主であった島津家の家紋と似ているところから名前を借りたという説です。

1つの郷土料理にこれだけの諸説が残っているところを見ても、非常におもしろい食べ物となっています。

伊予さつま汁の即席セットも

伊予さつま汁は愛媛県一帯に残っているというよりは、南予地域で食べられる郷土料理という認識のほうが強くなっています。愛媛県で最も栄えている松山市だと郷土料理店などで食されるぐらいで、一般家庭で作られるのは少数でしょう。

たとえば、南予地域にある「かどや」というお店では現在も伊予さつま汁を振る舞っています。さつま汁には南予地域でよく食べられる麦味噌を使用し、魚は鯛のすり身を使っています。さらにみかんの皮や刻みこんにゃく、ゴマ、ネギ等を入れて食します。

また、愛媛で味噌や麺類などを販売する「ギノーみそ」も伊予さつま汁を作れる即席セットを販売しています。袋を開けてご飯に掛ければすぐに食べられるようになっており、こちらにもほぐした鯛の身が入っています。また、冷や汁と同じように食べる場合はきゅうりを入れることもあります。

家庭でも簡単に作れる伊予さつま汁

南予地区では色濃く残る伊予さつま汁ですが、一般家庭で食べる場合は鯛ではなくアジやエソを使う場合も多くあります。今回は、一度は食べてみたい伊予さつま汁の簡単な作り方についてご紹介したいと思います。

まず、用意するのは鯛の切り身とネギ、麦味噌、みょうが、かつおだし、塩です。鯛でなくてもアジやサバでも大丈夫です。きゅうりを乗せたい人はそちらも用意しておきましょう。また、ごはんは冷たいもので大丈夫なのでお好みに合わせてください。

はじめにきゅうりやみょうが、ネギを刻んでいきます。鯛は塩を振ってから調理し、さらに身をほぐしておきます。その後、かつおだし1カップ分に鯛と麦味噌をスプーン1杯を混ぜ合わせ、ご飯に入れていきます。ご飯の上にみょうがとネギを添えれば完成となります。

魚が苦手な場合は、かつおだしを抜いてかつお節を入れることで猫まんまのように食べることもできます。味としては麦味噌とみょうがが入っていれば伊予さつま汁に近いものを楽しめます。

今回は愛媛県に残る冷や汁の伊予さつま汁についてご紹介してきました。愛媛でも一部の地域で食べられるようになった伊予さつま汁ですが、作り方をちょこっと変えるだけで飲んだ後や夜食などに食べやすい料理となります。ぜひ、ご自宅でも試していただければと思います。