定番料理といえど、形状を変えるだけでもこれまでにない新鮮な魅力を放ったりするもの。そんな事実がうかがえるのが、「歓喜の牛」の「四角いハンバーグ」だ。「テリーヌをイメージした」というこのユニークな料理は、四角いその形状とともに調理法にも新鮮な驚きを感じさせてくれる、新時代の進化形ハンバーグである。

ハンバーグを四角い形状にした理由について、「表面はカリッと焼き、中に肉のうま味がギュッと詰まったハンバーグにしたかった。それなら、従来の楕円形よりも面が多い四角い形状の方がよいだろう、と。テリーヌのイメージですね」と、同店を展開するFILL THE WORDの代表取締役・宮本健司氏は言う。

2回に分けて低温調理し、仕込んでおくタネは、このままでも食べられる状態。ドクターフライで再加熱し、熱々を提供する

しかし、メニュー試作で四角く成型し、鉄板で調理してみたところ、「6面すべてを焼くのは、大変過ぎた(苦笑)」。そこで別の調理法を模索していた際にフライヤーの「ドクターフライ」を知り、「食材の水分子をコントロールし、水分が外に出るのを防ぐフライヤーと聞いて興味を持ち、使ってみた。すると、外はカリカリ、中にうま味が閉じ込められたジューシーな状態に仕上がったので、早速導入した」(宮本氏)。

四角いハンバーグ御膳 1500円(税込み) 1個110~120gのハンバーグが2個付く

四角いハンバーグの作り方は次の通りだ。ハラミ、牛タン、赤身など、国産牛と黒毛和牛の複数の部位をひいた約20kg分のタネを、コンベクションオーブンで長時間かけてじっくりと低温加熱する。その後、テリーヌの型でタネを四角く成型する。ここまでの仕込みですでにタネには熱が通っており、そのまま食べられる状態。

あとは注文が入ったらドクターフライでさっと熱を通して提供する。肉のうま味が中にギュッと詰まった、「肉塊」と表現したくなる肉々しいハンバーグの完成だ。

特製醤油をかけ、溶き卵に絡めて食べるとすき焼き風の味わいに。締めには、肉汁が絡んだ溶き卵をご飯にかけて食べる楽しみも

「四角いハンバーグ御膳」は、だしの風味が染みたご飯と生卵、ガスパッチョ風のトマトベースの“飲むサラダ”を添えた、和の定食スタイルだ。初めはそのまま純粋にハンバーグの力強い味を楽しみ、その後は溶き卵にショウガを利かせた特製の甘醤油を混ぜたものを絡めて食べるのがおすすめで、「すき焼きのような味になりますよ」(宮本氏)。

斬新なその四角い形状とオリジナリティーある楽しみ方で、ハンバーグが「新タイプの肉塊料理」へと見事、進化を遂げている。

大通りから少し入った場所に位置するかわいらしい店舗

●店舗情報
「歓喜の牛」 経営=FILL THE WORD/店舗所在地=東京都港区港南2-4-11/開業=2021年5月/坪数・席数=14坪・24席/営業時間=11時~14時、17時~22時。年末年始休/平均客単価=1500~1700円

◇外食レストラン新聞の2021年9月6日号の記事を転載しました。