カレーに卵をコラボさせるメニューというと、「カレー+オムレツ」「カレーピラフ+オムレツ」のオムカレーか、あるいは温泉卵をトッピングして提供、といったあたりが定石だろう。しかし、東京・築地「鳥めし 鳥藤分店」のカレー&卵コラボは発想が一枚上手!カレーに親子丼をドッキングさせた、器の中で人気料理同士の味バトルが楽しめる一品だ。

「鳥めし 鳥藤分店」は、明治40年創業の鶏肉卸「鳥藤」が直営する鶏肉料理店。看板料理は親子丼で、1日120食を売り上げる。この看板料理に、こちらも人気メニューのカレーをぶつけたのが「親子カレー」だ。同社外食事業部の正野輝久主任によると「社長がまかないで、親子丼とカレーのどちらも食べたくて、いつも迷っていたそうです(笑)。それなら両方を合体させてしまおう。そんな思いつきから誕生しました」。

「親子カレー」1050円(税込み)。鶏肉ベースのカレーと親子丼のコラボは、老若男女問わず好まれる少し甘めの優しい味わい。しかし、盛りは築地市場の店にふさわしくボリューム満点。日販は約50食

同店のカレーは鶏肉を前面に打ち出し、ベースのルウは水を使わず、鶏肉をゆでた白湯スープで煮込んだ自家製。具材にも鶏肉を入れた鶏肉尽くしのカレーだ。一方の親子丼は卵2個分を使い、カレーと混ぜても合うよう、通常メニューの親子丼よりも軟らかいとろとろの半熟に仕上げている。「でも、カレーと親子丼、個々に食べ進めるお客さまがやはり多いですね」と、正野主任は話す。

「チキンキーマカレー」1000円(税込み)。「チキンキーマカレー」を注文し、これが運ばれてきたら軽く驚かされるだろう。ライスの上には揚げた長ネギを散らしている。日販は約20食

同店の「チキンキーマカレー」も面白い。鶏ひき肉の自家製キーマカレーはバターではなく鶏油で調理し、さらにはシンガポールチキンライス風に蒸した鶏もも肉をドンとのせた、どこまでも鶏肉が主役の一品だ。キーマのひき肉は、親鳥の鶏肉を自社工場でミンチにしたものを使用。少し硬くて料理には使いづらい親鳥を粗めのひき肉にしたことで、弾力のある心地よい食感が生まれ、普通のキーマカレーよりも味わい深い。

両品とも、これでもかとばかりに鶏肉の魅力を主張した、鶏肉卸が展開する店だからこその“鶏肉愛”に満ちた名料理である。

●店舗情報
「鳥めし 鳥藤分店」
所在地=東京都中央区築地4-8-6/開業=2003年/席数=16席/営業時間=7時30分~14時。日祝・市場休日休/平均客単価=1100円/1日平均集客数=220人

◇外食レストラン新聞の2021年5月号の記事を転載しました。