皿に盛られた様子は、おいしそうな色合いに煮込まれたまん丸いただのジャガイモ。しかし、割ってみると中には豚肉、ニンジン、玉ネギ、しらたきなどの具材がぎっしり。食べてみたら、味はまぎれもない肉じゃが。おなじみの肉じゃがをびっくりバクダン風にアレンジしたのが、埼玉・久喜市で地元客に親しまれている「居酒屋 粋マス」の名物メニュー「俺の肉じゃが」である。

マッシュにしたジャガイモを丸く成形

「居酒屋 粋マス」の「俺の肉じゃが」は、思わず笑みがこぼれる一品だ。ジャガイモの中に肉じゃがの具材が仕込まれており、箸で割ると楽しい驚きがある。一見するとただのジャガイモだが、実はマッシュにしたジャガイモを丸く成形。小さめに刻まれた中の具材と一緒に食べると、ホッとする味わいの肉じゃがそのものだ。

同店の塚越祐輔店長は、「他店とはカブらない独創的な料理をなるべく心掛けている。うちのような地元に根差す居酒屋は、他店との差別化が重要」と言う。

外見はまん丸いただのジャガイモ

作り方は、豚肉、ニンジン、玉ネギ、しらたきを小さめに刻み、少し濃いめの甘辛い味付けで煮る。「ジャガイモは素材の味を生かすため、あえて味を入れていません。その分、中の具材は少し濃いめの味付けにしている」と、塚越店長。

具材を煮たら、汁をしっかりきり、汁の方はとろみをつけてあんかけダレにする。次にジャガイモを蒸し、片栗粉を加えて滑らかなマッシュに仕上げる。1人前に使うジャガイモは約180gで、それぞれ均等の厚さにのばし、煮込んだ具材を詰めて丸く形を整える。

少し濃い目の甘辛い味付けの豚肉、ニンジン、玉ネギ、しらたきが中に

あとは、注文が入ったら5~8分ほど蒸し、先ほどの煮汁で作ったあんかけダレをかけて完成。1日に10食程度作り置きしているが、常連客の中に同メニューのファンは多く、ほぼ完売するという。

マッシュしたジャガイモはもちっとした口当りで、口の中でホロリと崩れる食感が絶妙。しっかり成形されているため、従来の肉じゃがと比べて箸でつまみやすく、複数人でシェアしても崩れることなく食べやすいのもいい。

マッシュしたジャガイモはもちっとした口当り

おなじみのお惣菜も、ちょっとした驚きをプラスすることで、どの店にもない粋な新感覚料理に進化するのだ。

煮汁で作ったあんかけダレをかけて完成

●店舗情報
「居酒屋 粋マス」
経営=万家
店舗所在地=埼玉県久喜市中央1-2-5
開業=2007年10月
坪数・席数=16坪・30席
営業時間=17時30分~24時。第2、3日曜休
平均客単価=3000~4000円
1日平均集客数=20~30人

◇外食レストラン新聞の2020年5月4日号の記事を転載しました。