カツに味噌味のソースを付けて食べるという習慣は、少し前まで関東にはほとんど存在しなかったように思う。まあ、少しと言ってもおそらく20~30年は前のことだろうが、いまでも関東出身のシニア層の中には、味噌カツをほとんど食べたことがない人がいるだろう。また、かつては惣菜でよく見かけた串カツも、関東ではほぼ姿を消してしまった。そもそも関東で知られる串カツは、肉と長ネギなどを交互に横向きに刺したもので、関西で知られるスタイルとは少し異なる。

じっくりと「育て上げる」という発想

この、関東でほとんど認知されていなかった味噌ソースの串カツを定番商品として育て上げたのがロックフィールドだ。同社は1965年に神戸で創業、老舗の惣菜店チェーン大手として連結売上高は500億円を超える。

首都圏1号店は1980年の高島屋横浜店だが、89年に生まれた「神戸コロッケ」ブランドが翌90年に松屋銀座本店に出店し、92年に創設された統一ブランドの「RF1」が東武池袋店に1号店を出店した頃から、同社は全国区として知られるようになったのだと記憶している。

2000年、東急百貨店に「東急フードショー」が登場し、商業施設の地下食品フロアは「デパ地下」と呼ばれて食のトレンドをけん引するようになった。

この「味噌カツ串」という商品がいつ生まれたのか正確には知らないのだが、少なくとも10年前にはすでに「神戸コロッケ」の商品として店頭に並んでいたようだ。どう考えても関東ですぐに圧倒的な支持を得たとは考えにくいこの商品を定番化するには、それなりの努力があったに違いない。

外食業界もヒット商品を探すばかりではなく、じっくりと時間をかけて「育て上げる」という発想が重要なのではないだろうか。

●店舗情報
「神戸コロッケ」「RF1」など
所在地=全国の商業施設など

◇外食レストラン新聞の2018年3月5日号の記事を転載しました。