日本伝統のオレンジピール、長崎銘菓「ざぼん漬け」【4月14日は、オレンジデー】
東京都江戸川区在住、されど心はいつでも旅人、たべぷろ編集部員の空居済名です。今回は長崎の銘菓をご紹介いたします。懐かしいですね長崎。昔、一度だけですが、訪れたことがあります。大浦天主堂、浦上教会、そして日本二十六聖人殉教記念碑。そう、長崎はキリシタンの地、日本キリスト教文化が今も息づく地です。
日本人とオレンジ、長くて甘酸っぱいその関係
4月14日はオレンジデーです。オレンジといえば柑橘類。一般に日本では、「みかんは日本のもので、オレンジは西洋のもの」というイメージがあるのではないでしょうか。スイートオレンジの代表品種であるバレンシアオレンジあたりについていえば確かに外国のものと見なして大過ないのですが、実は柑橘類全般についていえば、日本との関わりは古くからあります。
なんと、記録によれば、邪馬台国の卑弥呼女王の時代において既に、日本では柑橘類の仲間(タチバナ)が栽培されていたようなのです。邪馬台国についての記録とはもちろん、『魏志倭人伝』のことです。そこには、タチバナも含めたいくつかの邪馬台国の食物について紹介すると共に、こうあります。
「邪馬台国の人々は、これらのものを、おいしく食べるすべを知っていない」
魏志倭人伝の作者が、いったい、柑橘類であるタチバナについて、どういうおいしい食べ方を知っていたのか、それは分かりません。ただ、一般論から言いまして、柑橘類の食べ方といったら、みかんもオレンジもそうですが、だいたいは生食です。サラダに入れる、ヨーグルトで和えてみる、などの応用はありますが、まあこれも生食には違いないわけです。
ただ、柑橘類の生食以外の食べ方で、ひとつ、有名なものがあります。「オレンジピール」です。ピールとは直訳すると皮のことですが、製菓の用語でオレンジピールと言うときは、柑橘類の皮をドライフルーツや砂糖漬けにしたもののことを言います。余談ですが、オレンジピールをチョコレートがけにしますと、これはオランジェットという菓子になります。
長崎で出会った?キリシタンの製菓技術とざぼん
オレンジピールというのがあるのは分かったが、それは外国のものではないのかって?それが、そうでもないのです。そこで、ざぼん漬けの話になってきます。
今回ご紹介するざぼん漬けは、その名の通りざぼんという柑橘類の一種から作ります。ざぼんはブンタンとも言い、元々は東南アジア、ベトナム・カンボジア・タイなどの産物です。江戸期、日本に漂着した難破船に載っていたものが長崎へと伝わり、同地でも栽培されるようになりました。
そして、今回ご紹介するざぼん漬けというのは、そのざぼんの皮を、砂糖に漬けたものです。要するに、ざぼん漬けは、日本に古くから存在する、オレンジピールの一種なわけです。
ざぼん漬けがいつ生まれたのかについては、はっきりしたことは分かっていません。明治時代には現在と同じ形が既に完成していたようですが、江戸期のことは謎が多いです。ただ一説には、長崎伝来のキリシタンの製菓技法とざぼんが出会ったことで生まれたと言います。それが本当だとしたら、まさに、ざぼん漬けは長崎という地であればこそ生まれ得た、この地の特産物であるわけです。同地では、ざぼん漬けは長崎にとって、カステラに次ぐ代表的な銘菓であると言う人もあります。
砂糖漬けですので、甘いです。とても甘いです
さて、ではざぼん漬け、現物を用意しましたので、どんな味がするのか、実際に試してみたいと思います。なお、ざぼん漬けには完熟果の皮を用いた通常のものと、ざぼんの未熟果を丸ごと砂糖漬けにし、輪切りにした青切りざぼん漬けの2種類があります。今回は、両方とも実食と参ります。
こちらが通常のざぼん漬けです。「皮」とは言いますが、何しろざぼんは果実のサイズが最大で25センチあまりにも及ぶという大ぶりな柑橘類ですので、非常に肉厚です。一口含むと、かすかなほろ苦さを余韻に残す、どこか懐かしくもある、しかし確かな甘さが口に広がります。
そしてこちらが青切りざぼん漬け。薄切りですので、つまむのに手軽です。しっかり砂糖漬けになっているとはいえ元が未成熟果ですので、後に残るほろ苦さを孕んでいます。
なお、今回撮影に使用したものは、長崎県島原市、藤田チェリー豆総本店様の商品。こちらは長崎のお土産になるのは無論のこと、東京・日本橋にある長崎県のアンテナショップ「日本橋 長崎館」や、通信販売などでも入手することが可能です。
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