広島県東広島市在住のたべぷろ編集部員の椛山瑛代です。夫の転勤で広島に来て早12年。 海の幸と山の幸に恵まれた広島暮らしを楽しんでいます。今回は広島県北部に接するお隣、島根県飯南町の飯南高原で育つサツマイモ「森の絹」をご紹介します。驚くほどの甘さと滑らかさで注目を集め、産地の島根県ではじわじわと人気になっているのだとか。この「森の絹」、糖度約43度といわれる甘さで有名な安納芋よりも糖度が高く、なんと45~49度もある高糖度サツマイモなんですよ。

島根県飯南町の風土が育てる高糖度のサツマイモ

標高が高く、昼夜の寒暖差が激しい島根・飯南高原で育つサツマイモ「森の絹」。「森の絹」はサツマイモの品種名ではなくて、島根県飯南町で育てられたサツマイモの品種「紅あずま」「紅はるか」「シルクスイート」などを総称して名付けられたものです。

同じ品種でも、飯南町産のサツマイモは格段に甘く滑らかであることから、「森の絹」という名前で区別され、島根県内で人気商品となっています。その人気ぶりは、出雲市内のスーパーが他産地のサツマイモの約3倍の高値で買い取るほどなのだとか。

おいしさの訳は飯南町の気候風土にあります。飯南町は広島県と島根県の県境の中国山地の脊梁部に位置し、町の90%は森林という自然豊かな土地。平坦地でも標高が約450mある高原地帯ならではの昼夜の寒暖差と三瓶山の火山灰土でなる土壌とがあいまって、栄養価の高い高糖度のサツマイモを育てます。

このことは島根大学が長年にわたり研究していて、飯南町が高糖度サツマイモの栽培に最適な土地であることがデータからも実証されています。

その実力は定番の焼き芋で

高糖度サツマイモの「森の絹」の実力がわかるのは、なんといっても焼き芋で味わったとき。蜜が多いため甘くねっとりとした食感は、そのままでも高級な和菓子を食べているかのようです。

おいしい焼き芋のポイントは、時間をかけて焼くこと。最適なのは中温で1時間、低温で30分の合計1時間30分かけて 焼く方法で、芋のデンプンがしっかり糖へと変換され、甘い甘い焼き芋になるのだそうですよ。

「ちべたー芋」でも味わおう

産地・飯南町でポピュラーな焼き芋の楽しみ方は「ちべたー芋」。焼き芋を冷凍して食べる珍しい食べ方です。冷凍することによって細胞が壊れ、より滑らかで絹のような食感になるのだそう。凍ったままをアイス感覚で食べるのもいいですね。

解凍してつぶすと、裏ごしをしたかのように滑らかなサツマイモペーストができ上がります。お菓子作りに使用したり、パンにつけて食べたりするのもいいですね。

お芋だけでフルコースを楽しもう

「森の絹」をもっと多くの人に知ってもらおうと、先日「森の絹」を使ったフルコース料理をいただくイベントが広島で行われました。前菜、サラダ、スープ、メイン、ご飯、デザートまでお芋尽くし。その中から数品を紹介します。

前菜「森の絹と蓮根の酢豚風」

素揚げしたサツマイモとレンコンを酸味が効いた酢豚風の味付けでいただきます。サツマイモの甘さと酸味がとてもマッチして、さっぱりと食べられる一品。

前菜「森の絹とキヌアの白和え」

今注目のスーパーフード、キヌアと一緒に白和えでいただきます。キヌアのぷちぷちした触感、コロコロにカットされたサツマイモがの甘さがアクセントに。和食のイメージが強い白和えですが、サラダ感覚で食べられます。

メイン「森の絹のツェペリナイ」

本来はじゃがいもで作るツェペリナイをサツマイモで。スイートポテトのような見た目ですが、中にはローズマリーで香りづけをした鶏ひき肉が入っており食べ応え十分なメイン料理でした。生クリームとサワークリームを合わせたソースをかけて、しっとりといただきます。

他にもサラダに「森の絹と青パパイヤ、無農薬人参のコブサラダ風」、森の絹と豆乳で作る「森の絹のポタージュスープ」、サツマイモご飯、デザートには「ちべたー芋のモンブラン」など「森の絹」を味わい尽くす料理が味わえました。

同じ品種の野菜でも、育つ土壌が違えばその土地ならではの野菜に育ちます。普通のサツマイモとして流通するのではなく、この土地だからこそできるサツマイモとして食べてもらいたいです。

今回ご紹介した「森の絹」のように、生産者の思いがこもった魅力あふれる食材が日本中に沢山あります。皆さんも、その土地ならではの食材との出会いを求めて、いろいろな場所を訪れてみてくださいね。