SNS全盛の今、店のコンセプトをメニュー名や盛り付けで表現できているかが繁盛店のカギになっている。東京・渋谷の「樽ワイン酒場 呑牛呑気」は樽ワイン飲み放題というドリンクの売りをフードにも応用させて、店の世界観をまとめあげた好事例といえる。「当店の売りは50種類の樽ワイン飲み放題。これを強く印象づけるために、フードも樽で出てくる品があったら面白いんじゃないかと考えたんです」と宮脇順也マネージャーは笑う。

現在の“樽盛り”商品は「樽詰め肉のローストユッケ(卵黄ソースで)」と「樽タル ガーリックシュリンプ」の2アイテムだが、どちらも前菜的な位置付けとして注文される人気商品で、注文率は4割に達する。「樽ワイン酒場でカワイイ樽に入った料理を見つけました~」といった具合に女性客を中心にSNS投稿につながっている。

ローストユッケ
樽詰め肉のローストユッケ(卵黄ソースで)1480円(税込み)

商品開発の苦労を聞くと、宮脇マネージャーは「ちょうどいい樽がなかなか見つからなかった」ということ。「ようやく手頃なサイズの樽を見つけても白木の色合いが店のイメージと合わなかったんです。仕方なく自分で色付けすることにしました」。そこで食品衛生基準をクリアした塗料を購入し、一個一個手作業で仕上げたそうだ。店のコンセプトをビジュアル化するためにディテールにこだわるこうしたセンスは、SNS時代の店づくりに欠かせない勘所といえる。

ローストビーフ
ローストビーフは57℃で4時間低温調理して牛肉のうま味を最大化する

樽の中に盛り付けるローストユッケは、ローストビーフとローストポークのミックスがトータル250g入ってボリュームも満点。ローストビーフは赤身肉を塩、コショウ、オリーブオイルをベースにしたマリネ液に一晩なじませた後に、57℃の低温で4時間じっくりと加熱してしっとりとした食感に仕上げ、牛肉本来の味わいを引き出している。

ローストポークは盛り付け前に炙って味わいに違いをつくり、付加価値を高めている

他方ローストポークは醤油ベースのマリネ液を使用して“ほぼ焼豚”な味わい。盛り付け直前には表面を炙って香ばしさを付けている。個性の異なる肉料理をミックスしたところもポイントで“一品で二度おいしい”お得感の源泉となっている。

「樽を使った演出方法は可能性がある。今度は樽の口を逆さにして提供し、樽を持ち上げると料理が出てくる演出をしてみたい」と宮脇マネージャーは次の構想を練っている。

店の中央には50種類ものワイン樽がずらり。飲み放題30分390円~とお得感たっぷりだ

●店舗情報
「樽ワイン酒場 呑牛呑気」
経営==やるねん/店舗所在地=東京都渋谷区道玄坂1-10-7 地下1階/開業=2021年4月/坪数・席数=30坪・45席/営業時間=17時~23時(土22時30分、日祝22時)。年末年始休/平均客単価=3500円

◇外食レストラン新聞の2022年3月号の記事を転載しました。