この春、東京・銀座に開業した商業施設「ギンザ シックス」に、スイスの高級時計ブランド「フランク ミュラー」のブティックが出店した。創業者である時計技師フランク・ミュラー氏の卓越した技術と哲学的ともいえる独創的なアイデアで、機械式時計では世界でもトップクラスの人気を誇る著名ブランドだ。
この店には、同社では世界初となるスイーツショップが併設されている。今回は、たった一粒で税込み2500円を超えるとメディアでも話題を呼んだ、同店の和栗の「マロングラッセ」を賞味してみた。

なぜ時計ブランドがスイーツを?

吟味された素材を使用し、丁寧に作られた極上のスイーツ。そのおいしさは本物だ。非の打ちどころがない。

しかし、そもそもなぜ時計ブランドがスイーツなのか。おそらくこれは、あくまでもギフト商品なのだろう。実用品クラスでも1000万円を超えるものがあり、宝飾品の範ちゅうに入る超高級品では3億円以上の価格もある同社の時計に比べれば、2500円のスイーツなど安いものだ。

だがブランドのステイタスからすれば十分過ぎるほどに価値がある。そう考えると、6000円を超える「テリーヌショコラ」など他の高額なスイーツや、日本酒、アイフォン用のジャケットなどといった分野の商品が販売されている意味も分かる。これらはすべて贈答品として成立するアイテムだからだ。

同社はその技術力だけではなく、経営センスでも大いに評価されるべきだろう。それは時計作りで培ったブランド力を、他のビジネスに最大限に活用する応用力だ。1個2500円のスイーツに驚くのではなく、そうした商品の販売を可能にする仕組みに驚くべきなのだ。そう気づいたのが今回の最大の収穫だったと言えるだろう。

●店舗情報
「フランク ミュラー パティスリー」
所在地=東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 2階

◇外食レストラン新聞の2017年10月2日号の記事を転載しました。