フード&テーブルスタイリストの渡辺有子です。オリジナルのレシピをサイトにアップしたり、写真とともにコラムを執筆したりと、さまざまな理由で料理写真を撮影するとき、スマホでも上手に撮れたらな~と思うこと、ありますよね。そこで今回は、スマホでも上手においしそうに料理を撮影するためのコツとポイントをご紹介します。

スマホでもできる「食べたい!」「作ってみたい!」料理写真

料理のおいしさは、見た目や温度、香り、パリパリとした音、歯ごたえなどを五感で感じ味わうものですが、料理写真では、そのすべてを視覚的に表現することが大切になってきます。

レシピやコラムでは、たとえどんなに言葉でおいしさを伝えても、写真の見栄えひとつで「食べたい!」「作ってみたい!」となるかどうかが変わってしまいます。料理の写り映えが全体のクオリティーを左右するとなれば、もっと上手に写真を撮りたいところ!

最近のスマホは嬉しいことに高性能で、上手に使いこなせれば誰だって簡単にきれいな写真が撮ることができます。

連載企画の第1回目は「撮影空間を整えよう」です。撮影テクニックや機能以前のあたり前のことばかりですが、つい見落としがちな点、振り返りながら参考にしてみてくださいね。

<NG例>不要な食材や調理器具が散乱…

料理やレシピについて説明をする際、食材や調理の工程の写真を入れることはよくありますよね。例えばフレンチトーストを作る場合、食パンに卵、牛乳、砂糖を使用しますが、写真があることで、分かりやすくなって丁寧なコラム(レシピ)だなと感じます。ですが、上の写真ではどうでしょう?

すこし極端な例ですが、調理と同時進行で進めたい気持ちが先走ってしまい、背景に食器やカゴなどが散乱しています。普段の食事の準備ならよくありそうな光景ですが、写真としては説明したいはずの材料の情報にフォーカスされず、散漫なイメージです。

<プロの技>食材を整理して真上から撮影すればスッキリ

一方、上の写真は、必要な材料のみを整えてスマホで撮影した写真です。背景が写り込まないよう、真上から撮影したのでスッキリしました。スマホは真上からの撮影がとてもきれいに撮れるので、このような写真の撮り方はおすすめです。

また、牛乳パックは高さがあるため寝かせて置き、食パンは袋から出しています。砂糖もケースのままではなく、ココットなどに入れて準備すると使用分量も分かりやすくなります。

技術以前に、このようにきれいに写るよう撮影環境を整えて準備することは、スマホで上手に料理写真を撮る第一歩です。

<NG例>調理工程で調味料や器具などが無造作に…

続いて調理工程部分です。こちらも調味料や調理器具など無造作に置いたものが写り込んでいないか確認しましょう。上の写真は、先日ご紹介したポケットサンド記事の調理のワンシーンをスマホで撮影したNG例です。

野菜とソーセージを炒める、という工程を説明する場合ですが、急ぎ撮影しようと思ってこんな写真になっていることはありませんか。塩こしょうとオリーブオイルのボトル、さらにバラバラになった菜箸が写り込んでしまっています。

例えば、塩こしょうがレシピの重要な調味料! または、オイルはあえてオリーブオイルを使用することがポイント! というように意図して調味料を入れる場合はもちろん写し込んでOKです。

ですが、その場合でも、オリーブオイルかはっきり分からないボトルや、塩コショウも中途半端に入っていて分かりづらい…というこちらの写真では、残念ながらポイントはうまく伝わらない可能性が高いです。

<プロの技>あえてきれいに見える部分のみをピックアップ!

上の写真は、フライパンから取り出してバットに広げ、上からスマホで撮影しました。炒めることでキャベツのかさが減った点や、ソーセージも野菜もたっぷり食べられるという点を伝えたいのであれば、フライパンで炒めた様子ではなく、このような写真で紹介する方法もありです。

菜箸を入れることで、調理中のワンシーンのイメージが想像つきますし、その他の不要な情報が入らずキャベツとソーセージに目がいきます。

<NG例>主役の料理に目が集中しない完成写真

最後は盛り付けた完成写真で、朝食の食パンアレンジ記事を例にご紹介します。トーストにきな粉を振りかけて、和風な味わいを楽しむ!という内容ですが、完成が上のような写真だとどうでしょう?

こちらはキッチンで出来上がった料理をお皿に乗せただけの状態です。背景にまぶしたきな粉が中途半端に半分だけ写り込んでいて、主役のきな粉トーストに目が集中しないうえ、写真が全体的に暗くてなっています。

これでは、おいしそうには見えず、朝食としておすすめな点や和風テイストなど伝えたいこともうまく伝わらないのでNG写真としました。

<プロの技>食べるシーンを意識しておいしそうにスタイリング!

同じメニューでも、盛り付けを丁寧に行ってキッチンではなく明るい光が入る場所で撮影した写真がこちら! スマホ写真でもこんな風にきれいに撮ることができます。

NG写真と同じきな粉トーストですが、和風テイストを強調したかったので、和のお皿を使用しました。また、朝食におすすめのメニューということで朝のイメージになるよう牛乳をグラスに注ぎ、少量のサラダを一緒に盛り付けています。

写真から伝わる情報がこれだと「朝食の和風なトースト」くらいまで伝わるのではないでしょうか。

背景の映り込みを意識しよう!

第1回目は、撮影環境をテーマに、材料、調理工程、仕上げのそれぞれの段階についてご紹介しました。共通するポイントは、背景の映り込みを意識することです。

不要な調理道具や食器などは片付け、調味料などは写り込ませるべきか意図を考え、そして仕上げは盛り付けや食器などの背景を丁寧に準備することで料理を引き立てて、スマホ撮影でもおいしそうに見せることができます。

どれも、当たり前のことばかりですが、調理しながらいろいろな情報を伝えたいと思って進めると、つい料理の背景まで気が回らなくなることはよくあります。

スマホでも大丈夫! せっかくおいしくて素敵な料理をレシピやコラムにのせるなら、ぜひおいしそうに伝えわる写真撮影を心がけてみてはいかがでしょうか。

次回は、料理の主役とフォーカスポイントについてご紹介します!