今回から始まった新連載。日々、たくさんの飲食店を見ているなかで、私が「コレは!」と新鮮な驚きを感じたメニューを取り上げていきます。初回の今月は、ユニークな鍋料理。(飲食店プロデューサー 青島邦彰)

特注鍋を使った新感覚の鍋料理が続々誕生

最近、大胆にアレンジした鍋料理をちらほら見かけるようになってきました。まず、私が注目したのは、福岡県で目にした博多の「炊き鍋」。ドーナツの形状をした鍋を使い、真ん中にはスープを、その周辺を囲むドーナツ状のステージには肉や野菜を盛り付けた鍋料理です。

肉や野菜は、真ん中のスープでしゃぶしゃぶしながらいただく。見た目にもインパクトがあり、「ほぅ」と感心しましたが、真ん中のスープ鍋が小さく、スープがすぐに煮詰まるのが難点です。

一方、東京・新橋「パクチーファン」で提供している「きのこ鍋」も炊き鍋と同じような形状ですが、こちらはスープ鍋部が大きい特注品で、薬膳スープたっぷりなのがイイ。周囲のドーナツステージには数種類のキノコと、肉が盛り付けられています。にぎやかに盛られたキノコがユニークで迫力があり、インスタ映えもばっちりです。

何と見映えがする楽しげな鍋! 牛肩ロース肉巻きと豚バラ肉巻きを 各14本ずつ並べ、これで3~4人前分量になる

肉も野菜もひと口で食べやすく楽しい

感心したこの二つの鍋料理をさらに進化させ、私が今回提案するのが「肉巻き野菜のしゃぶしゃぶ」。真ん中のスープは中国の火鍋にならい、薬膳鶏白湯スープと麻辣醤油スープの2色にしました。

周りを囲むステージ部は特注品で、2色スープ鍋のフチにすっぽりかぶせるようにできています。このステージに野菜を敷き詰め、その上に肉巻き野菜をぐるりと盛り付けます。肉巻き野菜はスープに入れ、肉に火が通ったらそのままいただく。箸でつまんで食べやすく、肉に火が通った頃合いで食べると、中の野菜もシャキシャキ感が程よく残り、絶妙です。

肉と野菜を別々に引き上げて食べるのが今までの鍋料理でしたが、これならみんなで公平に分けて食べやすく、肉と野菜が一緒に食べられる。「肉ばっかり食べてたら、野菜に火が通り過ぎちゃった」なんてこともありません。

下に敷かれた野菜もスープに落として食べるので、野菜がたっぷり取れてヘルシー。肉は通常のしゃぶしゃぶ1人前量より少ないのに、野菜と一緒に食べるため、結構食べ応えがある。何より、盛り付けた鍋の見た目が、ちょっとお花畑のようで鮮やかでしょう(笑)。評判の名物メニューになり得ます。

鍋料理は鍋の形状や見せ方、食べ方にひと工夫加えると、斬新な新メニューとしてまだ進化する可能性を秘めているというわけです。

◇外食レストラン新聞の2018年4月2日号の記事を転載しました。